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胆振東部地震に伴う斜面崩壊における水の役割を解明~斜面は大地震が来れば崩壊する準備ができていた~(農学研究院 助教 桂 真也)

2022年5月11日

ポイント

●平成30年北海道胆振東部地震で発生した斜面崩壊のすべり面の水分状態を観測。
●すべり面は常に水を多く含んでおり,いつ大地震が来ても崩壊する準備ができていたことが判明。
●地震による斜面崩壊対策への貢献に期待。

概要

北海道大学大学院農学院修士課程(研究当時)の青木稔弥氏,同大学院農学研究院の桂 真也助教らの研究グループは,北海道胆振東部地震で発生した斜面崩壊における水の役割を解明しました。

胆振東部地震では,樽前山等から噴出した降下火砕物(軽石,火山灰等)が厚く堆積した斜面で6,000か所以上の崩壊が発生しました。その多くはTa-dと呼ばれる9,000年前の樽前山由来の降下火砕物の底部をすべり面としていました。崩壊は周囲から水の集まりやすい谷部で多く発生したこと,地震直前に台風21号による雨がもたらされたことから,崩壊に対する水の影響が示唆されていました。

研究グループは,崩壊した斜面と降下火砕物の層構造が似ている未崩壊の斜面(尾根部と谷部)内部の水分変動を約4か月間観測しました。その結果,谷部のTa-d底部は風化が進んで脆弱化しており,降雨に関係なく常に多くの水を含んでいた一方,尾根部では降雨時にのみ水を含んでいました。以上から,水は長期にわたりTa-dを風化させ脆弱化させる役割と,地震時に滑りやすくするという2つの役割を果たし,両方が強く発揮された谷部で多数の斜面崩壊が生したと考えられました。

つまり,降雨状況に関わらず谷部はいつ地震が来ても崩壊する準備ができていたと言えます。本研究の成果は,地震による崩壊が発生する危険性の高い斜面の抽出等への貢献が期待されます。

なお,本研究成果は,2022428日(木)公開のLandslides誌にオンライン掲載されました。

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胆振東部地震による斜面崩壊の例 左:厚真町幌内地区 右:厚真町吉野地区いずれも谷部が崩壊していることがわかる。