2022年5月18日
ポイント
●音楽に合わせたダンスや手拍子など,リズムに合わせた運動に小脳が関与するしくみを解明。
●同期運動中,小脳に刺激タイミングや時間誤差の情報をもつ細胞があることを発見。
●小脳の予測制御のしくみを解明することで,小脳疾患の病態理解と診断などへの応用が期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院・脳科学研究教育センターの岡田研一助教と田中真樹教授らの研究グループは,リズムに合わせた同期運動に小脳が関わるメカニズムを解明しました。
小脳が運動の予測制御に関与することは従来から知られていますが,詳しい神経機構はよくわかっていません。本研究では,周期的に交互に現れる標的に同期して眼球運動を行っている際に,標的が現れるタイミングの予測や,実際に行った同期運動の時間誤差に関連した活動を示す神経細胞が小脳の出力部に存在していることを明らかにしました。電気刺激による外乱を加えると運動のタイミングが変化したことから,小脳は,運動制御,標的の内部モデル,同期エラーに関した信号を上位の中枢に送ることで,同期運動のタイミング調節を行っていると考えられます。
本研究成果は,小脳疾患の病態を理解して機能評価する方法の開発に役立つだけでなく,ニューロモジュレーションを用いた介入法の開発や,様々な情報処理に応用できる脳型回路による予測アルゴリズムの開発などに貢献することが期待されます。
なお,本研究成果は,2022年5月6日(金)公開のNature Communications誌に掲載されました。
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