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表面酸化した銅ナノ粒子による低温焼結に成功~銀が主流のプリンテッドエレクトロニクスに、銅という選択肢を提示~(工学研究院 教授 米澤 徹)

2022年5月23日

ポイント

●銅ナノ粒子を、ヘキサン酸コートにより表面酸化を抑制して安定・大量に合成することに成功。
●表面に微酸化層・Cu64Oを形成させることにより、原子の拡散を高め、低温での焼結が可能。
●銀よりもコストの低い銅微粒子が導電材料、接合材料となることを示唆。

概要

北海道大学大学院工学研究院の米澤 徹教授、塚本宏樹研究員、同大学大学院工学院修士課程の戸倉凜太郎氏らの研究グループは、低温焼成によって導電薄膜や接合に用いることが可能な銅微粒子として、短鎖脂肪酸の一つであるヘキサン酸にコートされた銅微粒子を酸化銅粉末からのヒドラジン還元により作成し、ペースト化しました。この銅微粒子は比較的酸化しづらく低温で安定保存可能でありますが、X線回折、原子分解透過型電子顕微鏡分析により、表面にCu64O構造を有していることが明らかになりました。

さらに、このCu64Oは、加熱時にヘキサン酸と反応し、金属銅に変化することがわかりました。この反応によって、斜方晶のCu64Oが面心立方晶の金属銅に結晶構造が変化することになり、銅原子間距離が変化します。その結果、銅原子が再配列するため、比較的低温で拡散し、粒子同士が効率的につながり、導電性をもった被膜が形成されます。

この結果は、微酸化銅Cu64Oを材料として用いた初の例であり、こうした微酸化状態とその自己還元が銅の低温焼結に有効であることを世界で初めて示しました。つまり、銅ナノ粒子の酸化状態、結晶構造制御が低温焼結の鍵となることを強く示唆しています。この結果、プリンテッドエレクトロニクスに用いる導電材料やパワー半導体などに用いられる接合材料としての銅微粒子の低温焼成に一つの新たな道筋を拓き、銀から銅への元素代替・低コスト化に大きく貢献する可能性があります。

なお、本研究成果は、202245日(火)公開のMaterials Advances誌に掲載されました。

論文名:The role of surface oxides and stabilising carboxylic acids of copper nanoparticles during low-temperature sintering(銅ナノ粒子の低温焼成における表面の酸化物と保護剤カルボン酸の役割)
URL:https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2022/ma/d1ma01242h

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Cu64Oをもつ粒子の焼結時のヘキサン酸との反応によるネッキング形成