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腫瘍血管の酸化LDL受容体によるがんの転移促進を解明~がん転移の抑制方法や予測マーカーの開発への貢献に期待~(歯学研究院 教授 樋田京子)

2022年6月7日

ポイント

●転移性がんにおける酸化LDL蓄積を解明。
●腫瘍血管に発現する酸化LDL受容体が好中球の遊走を促進することを証明。
●がん転移の抑制方法の開発や診断マーカーの開発に期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教、同大学大学院歯学院博士課程(研究当時)の積田卓也氏、北海道大学病院の樋田泰浩准教授らの研究グループは、腫瘍血管内皮細胞における酸化LDLLOX-1経路が、がん組織中へ好中球を誘引して転移促進的ながん微小環境を形成している可能性を示しました。

がん転移の予防・制御は治療上重要な課題です。がんの転移には血管や免疫細胞などで構成されるがん微小環境が大きく影響しています。

研究グループは高転移性がん組織内には酸化LDLが多く蓄積していることを見出しました。更にそうしたがんにおいては酸化LDLの受容体であるLOX-1が血管内皮細胞に高発現しており、酸化LDLLOX-1経路を介して好中球のがんへの浸潤促進、転移促進性の微小環境形成に寄与している可能性が示されました。マウスの腫瘍モデルにおいて、腫瘍血管内皮細胞のLOX-1阻害によりがん転移の抑制傾向が認められたことから、LOX-1阻害は新たながん治療の標的となることが期待されます。循環器疾患においては酸化LDLと血管病態の関連が知られていますが、本研究によりがんの血管病態にも関与することがわかりました。酸化LDLが国民の死因1位であるがん、2位の循環器疾患の両者においてその病態進行に重要であることがわかりました。

なお、本研究成果は、2022524日(火)公開のInternational Journal of Cancer誌にオンライン掲載されました。

論文名:The oxidized-LDL/LOX-1 axis in tumor endothelial cells enhances metastasis by recruiting neutrophils and cancer cells(腫瘍血管内皮細胞における酸化LDL/LOX-1経路は好中球とがん細胞の遊走を促進しがんの転移を誘導する)
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ijc.34134

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本研究の概念図