2022年8月2日
ポイント
●4遺伝子のDNAメチル化状態の評価の組み合わせが、肝芽腫の予後因子であることを解明。
●現在肝芽腫治療に用いられているリスク分類を、DNAメチル化異常の評価と組み合わせて最適化。
●肝芽腫の個別リスクに応じた治療選択を改善し、更なる治療成績の向上に期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の武冨紹信教授らの研究グループは、DNAメチル化解析を組み込んだ肝芽腫に対する新規予後層別化モデルを発表しました。
肝芽腫は小児の代表的な悪性肝腫瘍であり、小児3大固形腫瘍の一つとして知られる一方、本邦では年間50例程度が報告されるのみの希少がんでもあります。多くの遺伝子変異を背景として発生する成人型腫瘍と異なり、肝芽腫は遺伝子変異が少ないことから、エピゲノム変異がその発生において重要な役割を果たしていると考えられています。
本研究では、DNAメチル化異常に着目し、日本小児肝癌スタディグループによって集積された多数の臨床検体を対象として、RASSF1A、PARP6、OCAID2、MST1Rの4遺伝子のDNAメチル化状態の評価が、肝芽腫の強力な予後因子であることを示しました。また、現在進行中である肝芽腫に対する国際共同研究において、治療層別化に用いられているリスク分類に、DNAメチル化解析を組み込むことで、より正確に予後を層別化可能であることを報告しました。
本研究の成果によって、肝芽腫患者それぞれのリスクに応じた個別化治療が可能となり、更なる予後改善に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2022年7月8日(金)公開のEuropean Journal of Cancer誌にオンライン掲載されました。
論文名:A novel risk stratification model based on the Children's Hepatic Tumours International Collaboration-Hepatoblastoma Stratification and deoxyribonucleic acid methylation analysis for hepatoblastoma(小児肝腫瘍国際コラボレーション-肝芽腫層別化とDNAメチル化解析に基づく肝芽腫における新規リスク層別化モデル)
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35816972/
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