2022年8月8日
ポイント
●アルギン酸ナトリウム保護金ナノ粒子分散液を用いX線金マーカー塊を作製することに成功。
●金ナノ粒子は分散液として提供できるために、施術時の混合分散作業が不要に。
●X線マーカーを留置する際の侵襲を大幅に低減し、放射線治療効果のさらなる向上を期待。
概要
北海道大学大学院工学研究院の米澤 徹教授、宮本直樹准教授、同大学大学院工学院博士後期課程のリウ ハオラン氏及び北海道大学病院の白土博樹教授らの研究グループは、リアルタイム画像同期陽子線治療(RGPT)に用いられる植込み型病変識別マーカ(X線マーカー)として、生体適合性の高いアルギン酸ナトリウム保護金ナノ粒子を開発することに成功しました。その分散液を人体を模したゲル内に注入後、カルシウムイオン水溶液を注入することで固形化させたゲル状のX線マーカーで従来の直径1.5-2mmの金マーカーと同様の視認性が得られました。
従来、RGPTでは1.5~2mmの金球がX線マーカーとして使われており、これを腫瘍患部付近に導入するためには外径が約2~2.5mm程度のシースが用いられていました。最近、同研究グループは、骨充填剤であるセラミックス粉末に金ナノ粒子を担持させることで、外径1mm以下の21Gの注射針で導入できるX線マーカーを開発しました。今回、塩化金酸のエタノール還元法を用いて、生体親和性の高い有機高分子であるアルギン酸ナトリウムを金ナノ粒子表面に保護コーティングさせることで、分散性が高く、濃厚分散液化することが可能な金ナノ粒子を開発しました。この金ナノ粒子液は25G(外径: 0.51mm)の注射針でも使用可能であり、留置の際の侵襲がより低いX線マーカーとなることが明らかとなりました。また、金ナノ粒子は分散液として提供されるため、施術時の混合分散などの操作が不要となり、現場での負担を軽減することができます。なお、本研究成果は、2022年5月17日(火)公開のMaterials Advances誌に掲載されました。
論文名:Green and effective synthesis of gold nanoparticles as injective fiducial marker of real-time image gated proton therapy(リアルタイム画像同期陽子線治療における位置合わせマーカーとしての利用される金ナノ粒子のグリーンで効率の良い製造法)
URL:https://doi.org/10.1039/D2MA00172A
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図:アルギン酸ナトリウム保護金ナノ粒子分散液を用いることで、腫瘍近傍に外径0.51mmの25Gの注射針を用いて注入することが可能となりました。カルシウムイオン水溶液で固形化した金ナノ粒子は十分な視認性のある金マーカーでした。