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人工高分子の不均一な折りたたみ構造を発見~単調・均一な立体構造からより複雑で高次元な高次構造の制御へ~(触媒科学研究所 教授 中野 環)

2022年9月6日

ポイント

●人工高分子が"ターン構造"と"らせん構造"を含む不均一な折りたたみ構造を形成。
●折りたたみ構造に基づく円偏光発光特性の増幅を実現。
●人工高分子に対し均一な立体構造のみならずタンパク質並みの複雑な高次構造を制御できる可能性。

概要

北海道大学触媒科学研究所高分子機能科学研究部門の中野 環教授、同大学院総合化学院博士後期課程 ウ ペンフェイ氏、カタンザロ大学のアドリアナ ピエトロパウロ准教授、金沢大学の前田勝浩教授、芝浦工業大学の永 直文教授らの研究グループは、発光性材料として知られるポリフルオレンビニレン誘導体が、固体中で鎖が急角度で折れ曲がる"ターン構造"と一方向にねじれた"らせん構造"から成る不均一な折りたたみ構造を形成することを発見しました。

人工高分子の制御立体構造として一方向巻きのらせん構造が知られており、この構造に基づいて医薬品原料などのラセミ体の不斉識別、円偏光発光等を含む実用的キラル機能が実現されていますが、従来は、均一で単調ならせん構築が制御の焦点でした。これに対して、らせん構造を含む天然高分子であるタンパク質は、らせんに加えてβ-構造、ターン構造等が精巧に組み合わされた不均一な折りたたみ構造を持っています。しかし、人工高分子には、複数の2次構造からなる折りたたみ構造制御の明確な例はありませんでした。

研究グループは、側鎖にキラルなメオメンチル基を有するポリフルオレンビニレン誘導体が、薄膜中および懸濁液中(いずれも固体中)で一方向にねじれた"らせん構造"が鋭く折れ曲がった"ターン構造"により連結された不均一折りたたみ構造を形成することを実験および理論化学的手法により明らかにしました。この成果は、人工高分子の高次構造研究を不均一で複雑な高次構造を目標としより高度な応用を目指すものへと発展させる端緒となり得るものです。

なお、本研究成果は、2022812日(金)公開の Angewandte Chemie International Edition 誌にオンライン掲載されました。

論文名:Non-uniform Self-folding of Helical Poly(fluorenevinylene) Derivatives in the Solid State Leading to Amplified Circular Dichroism and Circularly Polarized Light Emission(らせん状ポリフルオレンビニレン誘導体の固体中での不均一折りたたみ構造の形成による円偏光二色性と円偏光発光特性の増幅)
URL:https://doi.org/10.1002/anie.202210556

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ポリフルオレンビニレンの折りたたみ構造(左)、ガラス表面での構造シミュレーション(中)、透過型電子顕微鏡観察イメージ()