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「水草の王様」希少種ナガバエビモの新産地を発見~道北地方に比較的広く現存する可能性を示唆~(総合博物館 助教 首藤光太郎)

2022年9月22日

ポイント

●ナガバエビモは、国内希少野生動植物種に指定されたヒルムシロ科の多年生沈水植物。
●ナガバエビモの集団を、道北地方(北海道稚内市・猿払村)で複数確認。
●砂丘列や丘陵から供給される湧水に依存して、これらの地域に広く現存している可能性を示唆。

概要

北海道大学総合博物館の首藤光太郎助教、同大学水産学部4年生の廣瀬朋輝氏、環境省稚内自然保護官事務所の柴原 崇氏、札幌市博物館活動センターの山崎真実学芸員、新潟大学教育学部の志賀 隆准教授の研究グループは、道北地域で希少種ナガバエビモ(ヒルムシロ科)の新産地を複数発見し、この地域に広く現存している可能性を示しました。

ナガバエビモはヒルムシロ科の多年性沈水植物で、北半球の亜寒帯を中心に広く分布する一方で、国内の分布が北海道と長野県に限られる希少種です。かつては北海道内に広く分布していましたが、水質汚濁などが原因で多くの既知産地で消滅してしまいました。このため、2017年からは法律により許可のない採取や販売が規制されています。また、優美な姿をもつことも特徴で、「日本の沈水植物の王様」と呼ばれたこともあります。

2020年、首藤助教と廣瀬氏は、道北地域のそれぞれ異なる場所で、ナガバエビモの生育を発見しました。同時期に複数の産地が確認できたことからこの地域に現在も広く生育している可能性が考えられ、翌年現地調査を行ったところ、合計5つの池沼でナガバエビモの生育を確認することができました。これらの生育地をもとに生育条件を検討したところ、道北地域では砂丘や丘陵から供給される低水温の地下水に依存して分布している可能性が示唆されました。今回の発見により、寸前と思われていたナガバエビモの国内からの絶滅に歯止めがかかりました。

本研究成果は、2022813日(土)、Journal of Asia-Pacific Biodiversityにオンライン掲載されました。

論文名:Obtaining new records of critically endangered Potamogeton praelongus (Potamogetonaceae) depending on groundwater springs in northern coastal areas of Hokkaido, Japan(北海道沿岸地域で湧水に依存して生育する絶滅危惧種ナガバエビモの新記録)
URL:https://doi.org/10.1016/j.japb.2022.07.004

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発見されたナガバエビモ