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成人T細胞性白血病/リンパ腫のNK細胞免疫環境の解明~免疫療法への貢献に期待~(医学研究院 特任准教授 中川雅夫)

2022年9月8日

ポイント

●難治性の悪性リンパ腫「成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)」のNK細胞抵抗性を解明。
●CRISPR-Cas9スクリーニングによってATLLのNK細胞免疫に重要な遺伝子を同定。
●ATLLを含むT細胞性悪性リンパ腫の免疫療法の治療効果予測に期待。

概要

北海道大学大学院医学院の千葉雅尋医員と同大学院医学研究院の中川雅夫特任准教授らの研究グループは、同大学大学院薬学研究院(前仲勝実教授)と共同研究で、難治性T細胞性悪性リンパ腫「成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)」のNK細胞免疫からの耐性機序を解明しました。

ATLLhuman T-cell leukemia virus type 1HTLV1)感染者の一部に生じる、日本人での発症頻度が比較的高いT細胞性の悪性リンパ腫です。ATLLは既存の治療に対する反応性が乏しい難治性の疾患で、新しい視点からの治療法の開発が求められています。

今回の研究では、新規ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9を用いてATLL細胞株内の約20,000種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、どの遺伝子が最もATLLNK細胞免疫に重要な役割を担っているかを機能的にスクリーニングしました。その結果、ATLL細胞の表面に発現するCD48NK細胞からの攻撃に対する感受性に重要な役割を果たしていることを見出しました。さらにATLL細胞では正常なリンパ球と比較してCD48の発現が低下していることを発見しました。これらの結果からATLL細胞は自身のCD48の発現を低下させることで、NK細胞からの免疫を回避し、悪性腫瘍の形質を獲得していると考えられました。

そして、ATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においても、正常なリンパ球と比較してCD48の発現量が低下しており、予後との関連も示すことができました。

このことから、ATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においてもCD48の発現量がNK細胞免疫からの逃避に重要な役割を担っていると考えられます。

今回の結果から、T細胞性の悪性リンパ腫のCD48発現が免疫療法の治療効果予測に繋がることが期待されます。

なお、本研究成果は、202283()公開のBlood誌にオンライン掲載されました。

論文名:Genome-wide CRISPR screens identify CD48 defining susceptibility to NK cytotoxicity in peripheral T-cell lymphomas(CRISPRスクリーニングでT細胞性の悪性リンパ腫のNK細胞傷害を規定する遺伝子としてCD48を同定)
URL:https://doi.org/10.1182/blood.2022015646

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