2022年10月7日
ポイント
●超高解像度テレビ用材料の高い電子移動度の起源を解明。
●独自の熱電能電界変調法により、トランジスタの動作機構を解析。
●100cm2/Vsを超える超高移動度の透明酸化物薄膜トランジスタ実現に向けた大きな前進。
概要
北海道大学電子科学研究所の楊 卉客員研究員、松尾保孝教授、曲 勇作助教、太田裕道教授らの研究グループは、超高解像度テレビ用材料の高い電子移動度の起源を解明しました。
透明酸化物半導体ITZOは、現在の有機ELテレビなどに応用されている透明酸化物半導体IGZO(電子移動度:約10cm2/Vs)の5倍以上の高移動度(>50cm2/Vs)を示すことから、超高解像度テレビ用材料として期待されていますが、その高い電子移動度の起源は未解明でした。
本研究では、研究グループ独自の熱電能電界変調法により、ITZO薄膜及びITZO薄膜トランジスタの熱電能を計測・解析しました。その結果、①ITZOのキャリア電子の有効質量がIGZOよりも30%ほど軽いこと、②ITZOのキャリア緩和時間がIGZOの4倍長いこと、③伝導層の厚さが10nm以上に厚いことが、ITZOの高い電子移動度の起源であることが分かりました。電子移動度が100cm2/Vsを超える、超高移動度の透明酸化物薄膜トランジスタ実現に向けた大きな前進と言えます。
なお、本研究成果は、2022年9月29日(木)にACS Applied Electronic Materialsにオンライン掲載されました。
論文名:Thermopower Modulation Analyses of High-Mobility Transparent Amorphous Oxide Semiconductor Thin-Film Transistors(高移動度透明アモルファス酸化物半導体薄膜トランジスタの熱電能変調解析)
URL:https://doi.org/10.1021/acsaelm.2c01210
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