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心筋エネルギー産生能を低下させる代謝変化の同定に成功~慢性心不全治療への貢献に期待~(遺伝子病制御研究所 客員教授 佐邊壽孝)

2022年10月13日

ポイント

●慢性心不全心筋エネルギー産生能低下をもたらす代謝変化を捉えることに成功。
●低下したエネルギー産生能を回復できる栄養素を同定。
●栄養的介入による慢性心不全治療開発を可能とする学問的裏付け。

概要

北海道大学の佐邊壽孝名誉教授(前大学院医学研究院教授、現遺伝子病制御研究所客員教授)、同大学大学院医学研究院客員研究員、北翔大学生涯スポーツ学部准教授の髙田真吾氏、九州大学大学院医学研究院の絹川真太郎准教授らの研究グループは、マウスモデルを用い、慢性心不全における心筋ミトコンドリアエネルギー産生能低下の主原因となる代謝変化を捉えることに世界ではじめて成功しました。

ミトコンドリアはエネルギー産生の中核であり、ミトコンドリアエネルギー産生能の低下や障害が心不全発症と深く関係することが知られています。急性心不全でエネルギー関連代謝に発生する変化は最近明らかにされましたが、慢性心不全におけるエネルギー関連代謝に関しては不明な点が多く残されています。特に、エネルギー産生能低下との因果関係を示した研究成果はこれまでありませんでした。

研究グループは、変化を補完する代謝物の投与によって、心不全での心筋ミトコンドリアのエネルギー産生能低下、心機能と全身運動能を統計的有意に補完し得ること、マウス生存性も延長されることを実験実証しました。慢性心不全マウスで見つかった代謝変化と同等と考えられる変化はヒトデータベースでも確認されます。今回の研究成果は、特定の栄養素を基盤とする「より自然な」慢性心不全治療薬開発に対し、基礎医学的妥当性を与えるものです。

本研究成果は、2022106日(木)公開の米国アカデミー紀要誌にオンライン掲載されました。

論文名:Succinyl-CoA-based energy metabolism dysfunction in chronic heart failure(慢性心不全におけるサクシニルCoAベースのエネルギー代謝機能障害)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2203628119

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本研究の概要図