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カチオンパイポリマー製塞栓物質の開発にはじめて成功~脳血管奇形治療成績向上に期待~(医学研究院 教授 藤村 幹、先端生命科学研究院 教授 龔 剣萍)

2022年10月25日

ポイント

●カチオンパイポリマーを元にした、全く新しい作用機序をもつ塞栓物質の開発に成功。
●新しい塞栓物質の、十分な塞栓効果と生体への安全性を確認。
●脳血管内治療の合併症を低減させる可能性が高く、脳血管奇形の治療成績向上に期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院の藤村 幹教授、同大学大学院先端生命科学研究院の龔 剣萍教授らの研究グループは、カチオンパイポリマーを元に全く新しい作用機序をもつ塞栓物質を開発し、この新規塞栓物質の物性評価、血液との反応性、生体安全性を確認いたしました。

現在、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻に対する脳血管内治療においては、液体塞栓物質が治療に用いられていますが、既存の液体塞栓物質は有機溶液の使用やカテーテルへの接着などの原因により、合併症を起こすことが課題とされています。

そこで研究グループは、本学で創生された、液体環境でも静電相互作用により陰イオンに帯電する物質と接着する性質をもつカチオンパイポリマーを、新たな塞栓物質として着目しました。本研究では、このカチオンパイポリマーをもとに、これまでの液体塞栓物質とは全く異なった機序で血管閉塞にいたる塞栓物質を開発し、臨床での実用性について検討するために、血液凝集試験、注入試験、引っ張り試験、生体適合試験などの評価を行いました。これらの試験の結果、新しい塞栓物質は臨床で十分な塞栓効果を持ちながら、既存の塞栓物質と比べてカテーテルへの接着などのリスクが極めて低いことがわかりました。

本研究の結果から、この新規塞栓物質は脳血管内治療の合併症を低減させる可能性が高く、今後の臨床応用につながることが期待されます。

なお、本研究成果は、20221010日(月)公開のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌にオンライン掲載されました。

論文名:Gluing Blood into Gel by Electrostatic Interaction using a Water-soluble Polymer as Embolic Agent(静電相互作用を利用し塞栓物質としての血液凝集を促す水溶性高分子ポリマー)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2206685119

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本研究の概要図。
脳動静脈奇形に対する塞栓術用の新たな液体塞栓物質として、カチオンパイポリマーから新規の塞栓物質の開発に成功。