2022年11月22日
ポイント
●好中球減少時に腸内細菌叢依存性にT細胞からのIL-17A産生が促進されることを解明。
●好中球減少時に腸内細菌が、骨髄での好中球造血を効率よく促進できるように変化することを発見。
●好中球造血を促進する菌を保つ抗生剤、刺激するプロバイオティクスや菌叢移植法の開発に期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授、橋本大吾准教授らの研究グループは、同大学大学院先端生命科学研究院の綾部時芳教授及び中村公則准教授との共同研究を行い、造血幹細胞移植や化学療法後の好中球減少時に、反応性好中球造血によって好中球数が回復するメカニズムに、腸内細菌叢が重要な役割を果たすことを、マウスモデルを用いて発見しました。
好中球減少が遷延すると、T細胞からのインターロイキン17A(IL-17A)産生が生じ、IL-17Aはさらなる顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)の産生を促進し、骨髄での反応性好中球造血を刺激して好中球回復を促進することが分かりました。このT細胞の反応や反応性好中球造血は、腸内殺菌を行うと抑制されました。好中球減少時の腸内細菌叢を、16S rRNA遺伝子シーケンスにより検討したところ、好中球減少が遷延すると腸内細菌叢が変化することが判明しました。この好中球減少によって誘導された腸内細菌叢は、別の好中球減少マウスに糞便移植の形で移植すると、定常状態の腸内細菌叢よりも、IL-17Aの産生や反応性好中球造血を効率よく刺激できることが分かりました。
この結果から、化学療法や造血幹細胞移植後に、好中球造血を促進する菌を保つ抗生剤の使用法や、好中球造血を刺激するプロバイオティクスや菌叢移植法の開発に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2022年11月22日(火)公開の米国科学アカデミー紀要に掲載されました。
論文名:Reactive granulopoiesis depends on T-cell production of IL-17A and neutropenia-associated alteration of gut microbiota (好中球減少時のT細胞依存性反応性顆粒球造血は、好中球減少によって変化した腸内細菌叢によって促進される)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2211230119
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(A)マウス造血幹細胞移植後に血漿のIL-17A濃度が上昇した。(B、C)T細胞が存在しないRAG1欠損マウスをレシピエントとして移植を行い、移植と同時に野生型もしくはIL-17A欠損マウスから純化したT細胞を輸注したところ、野生型T細胞を輸注したレシピエントのみで、IL-17Aが移植後に上昇し、好中球の回復も促進された。