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ヒラムシの棲みかはどう変わる?~海岸の堆積砂の隙間に棲むヒラムシの生息環境の進化過程を推定~(理学研究院 教授 柁原 宏)

2022年11月24日

北海道大学
桜美林大学

ポイント

●同じ海岸の異なる環境から、同じグループに属する2種の新種ヒラムシを発見。
●分子系統樹を作成し、生息環境の進化の道筋を推定。
●ヒラムシは進化の過程で生息環境を柔軟に変えてきた可能性を示唆。

概要

北海道大学大学院理学院博士後期課程3年の露木葵唯氏、桜美林大学リベラルアーツ学群の大矢佑基助教、北海道大学大学院理学研究院の柁原 宏教授の研究グループは、沖縄県東村の海岸から得られた2つの新種ヒラムシの生息環境の違いに着目し、同じグループのヒラムシにおいて、進化の過程でどのように生息環境が変化したのかを分子系統解析によって推定しました。

「間隙性動物」と呼ばれる砂粒の隙間の間隙水で生活する小さな動物は、多くの動物門にまたがって報告されています。動物門が異なるにもかかわらず、特殊な環境に適応した共通する形態の特徴を持つことが多く、その進化機構は長い間注目されてきました。しかし、少数の限られた動物門を除き、間隙性の生活がどのように進化したのかはよくわかっていません。

ヒラムシは海に棲む扁形動物(プラナリアやサナダムシの仲間)です。多くは海底の石や瓦礫の表面から見つかりますが、間隙性の種類も知られています。本研究では、同じ浜辺から砂の隙間に棲む小型種と転石の表面にくっついて生活する大型種を発見し、それぞれが既知の種のいずれにも該当しない特徴を持つ未知の種であることを明らかにしました。

さらに、同じグループに属するヒラムシを対象に、DNA情報を用いた系統関係をもとに祖先の生息環境を推定しました。その結果、このグループの祖先は一度間隙性の環境に入ったが、その後進化の過程で再び砂の隙間の外に出て大型化し、表在性の生活様式を獲得したことが示唆されました。

なお、本研究成果は20221123日(水)公開のPLOS ONE誌にオンライン掲載されました。

論文名:Reversible shifts between interstitial and epibenthic habitats in evolutionary history: molecular phylogeny of the marine flatworm family Boniniidae (Platyhelminthes: Polycladida: Cotylea) with descriptions of two new species(進化史における間隙棲と表在棲の可逆的な変化:2種の新種記載を伴うボニニア科ヒラムシ類の分子系統)
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0276847

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今回発見された2つの新種ヒラムシ:転石表面に棲む大型種(上)と砂の隙間に棲む小型種(下)