2022年12月7日
北海道大学
東京農工大学
ポイント
●魚類がマイクロプラスチックの摂取によりプラスチック添加剤を体組織に蓄積することを発見。
●添加剤の一部は魚類がマイクロプラスチックを含む餌生物を捕食することにより移行。
●添加剤が食物連鎖を通じて人間を含む多数の動物に影響を与える可能性を指摘。
概要
北海道大学大学院環境科学院修士課程(研究当時)の長谷川貴章氏と同大学北方生物圏フィールド科学センターの仲岡雅裕教授、東京農工大学の高田秀重教授、水川薫子助教、ヨー ビーギョク研究員を中心とした研究グループは、魚類がマイクロプラスチックの摂取を通じて、プラスチック製品に含まれる添加剤を筋肉や肝臓などの体組織に取り込み蓄積することを、世界で初めて実証しました。
添加剤は、プラスチックが細分化されると周辺環境に溶出しやすくなります。魚類はマイクロプラスチックを海水中及び餌生物から取り込むため、その2つの経路を介して添加剤が体組織に移行・蓄積する可能性が指摘されていました。そこで、肉食性魚類シモフリカジカとその餌生物であるイサザアミ類を用いて、魚類のマイクロプラスチック摂取による添加剤の組織への移行について、両経路の相対的重要性を検証しました。
その結果、添加剤入りマイクロプラスチックを含む海水中で魚を飼育した場合及びマイクロプラスチックを含む餌生物を魚に摂食させた場合に、魚の筋肉や肝臓に添加剤が蓄積することが示されました。両経路の相対的重要性は添加剤の種類や組織により異なっており、それには化学物質の特性が関連していることが示唆されました。
マイクロプラスチックを通じて魚類の体内組織に蓄積した添加剤は、食物連鎖を通じて人間を含む高次消費者の体内に濃縮され、さまざまな悪影響を与える可能性があります。それらの影響を解明するための研究のさらなる進展が期待されます。
本研究成果は、2022年11月18日(金)公開のMarine Pollution Bulletin誌に掲載されました。
論文名:The significance of trophic transfer of microplastics in the accumulation of plastic additives in fish: An experimental study using brominated flame retardants and UV stabilizers.(魚類におけるプラスチック添加剤の蓄積におけるマイクロプラスチックの食物連鎖を介した垂直輸送の重要性:臭素系難燃剤と紫外線吸収剤を用いた実験)
URL:https://doi.org/10.1016/j.marpolbul.2022.114343
詳細はこちら