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北海道内の野生動物から鳥インフルエンザウイルスを分離~鳥の渡りによってウイルスが世界各地に分配されていったと予想~(獣医学研究院 教授 迫田義博)

2022年12月14日

ポイント

●2022年上半期、北海道内の鳥や哺乳動物から16株の高病原性鳥インフルエンザウイルスを分離。
●分離されたウイルスは同時期にヨーロッパや北米で流行していたウイルスと類似。
●渡り鳥によって国内外からウイルスが運ばれる事態となってきたため、一層の警戒が必要。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授らの研究グループは、20221月以降、北海道内で回収された野鳥、家禽と野生哺乳動物からH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスを分離し、世界的に流行している同ウイルスの分布状況について多くの知見を得ました。

高病原性鳥インフルエンザは病原性の高い鳥インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起こる病気です。近年、本疾病は毎冬、ヨーロッパやアジアを中心とした世界的な大流行を起こし、日本でも家禽のみならず野鳥での本疾病の発生が大きな問題となっています。研究グループは、20221月以降、北海道で発見された野鳥や猛禽類の死体から鳥インフルエンザウイルスを、死亡キタキツネ及び衰弱タヌキから高病原性鳥インフルエンザウイルスをそれぞれ分離しました。本ウイルスの哺乳動物からの分離は日本で初めての事例です。

分離された合計16株のウイルスの遺伝子を調べたところ、全てのウイルス遺伝子は近縁であり、これら動物での、近縁なウイルスの循環が予想されます。また20225月に北海道網走市の養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザの病原ウイルスの遺伝子は他の北海道株とは異なり、2022年初めに本州で循環していたウイルスと近縁でした。また、鳥インフルエンザウイルス感染が疑われたキタキツネとタヌキの検査を行ったところ、上部気道でウイルスが増殖しており、加えてキタキツネではウイルス性の髄膜脳炎が、タヌキでは結膜炎が疑われました。またこれら動物の呼吸器上皮細胞を検索したところ、鳥型のインフルエンザウイルス受容体が有意に分布しており、これらウイルスの呼吸器における感染を裏付ける結果が得られました。

今回分離されたウイルスの遺伝子情報から、当該ウイルスは特定の場所から鳥の渡りによって世界各地に分配されていったと予想されます。また鳥の渡りによって、ウイルスが国内外から持ち込まれることも再度確認できました。そしてこれらウイルスの拡大により、本来の宿主ではない動物への感染拡大についても警戒が必要であることが分かりました。引き続き世界規模の渡り鳥による鳥インフルエンザウイルスの拡散を監視し、特に家禽における高病原性鳥インフルエンザの発生について国内でも一層警戒することが必要です。

なお、本研究成果は、2022930日(金)公開のViruses誌、また2022121日(木)公開のVirology誌に掲載されました。

論文名:Detection of new H5N1 high pathogenicity avian influenza viruses in winter 2021-2022 in the Far East, which are genetically close to those in Europe(極東にて2021-2022年冬に検出された、欧州流行株と遺伝子的に近縁な新規H5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの検出)
URL:https://doi.org/10.3390/v14102168

論文名:Virological, pathological, and glycovirological investigations of an Ezo red fox and a tanuki naturally infected with H5N1 high pathogenicity avian influenza viruses in Hokkaido, Japan(日本の北海道で確認されたH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスに自然感染したキタキツネとタヌキのウイルス学的、病理学的及び糖鎖ウイルス学的解析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.virol.2022.11.008

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