2023年1月23日
ポイント
●自然界に新規α-L-グルコシド加水分解酵素「α-L-グルコシダーゼ」を発見。
●α-L-グルコシダーゼを利用して新規のα-L-グルコシドを酵素合成に成功。
●α-L-グルコシド関連酵素解析、α-L-グルコシドの生理活性解明など新学術領域発展に期待。
概要
北海道大学大学院農学研究院の奥山正幸教授らの研究グループは、α-l-グルコシドを加水分解する酵素、α-l-グルコシダーゼを発見しました。
理論上グルコースには、鏡像関係にあるd-グルコースとl-グルコースが存在します。自然界にはd-グルコースのみが存在しており、l-グルコースは存在しないものとされてきました。またグルコースの多くは、澱粉やグリコーゲン、セルロースのように脱水縮合したグルコシドの形で天然に存在しますが、これらはすべてd-グルコースによって構成されています。
今回発見したα-l-グルコシダーゼはα-l-グルコシドを選択的に加水分解するタンパク質構造と機能を有しています。また本研究では、α-l-グルコシダーゼを用いた新規α-l-グルコオリゴ糖の合成にも成功しています。オリゴ糖は腸内環境を整えることで私たちに健康をもたらすプレビオティクスとして知られています。α-l-グルコオリゴ糖にも同様の生理活性が期待されます。本研究によって自然界にα-l-グルコシドやその分解生成物であるl-グルコースが存在する可能性が高まりました。今後α-l-グルコシダーゼに加えて、α-l-グルコシド分解・合成酵素の探索や機能・構造解析、α-l-グルコオリゴ糖の生理機能解明研究など、新しい学問分野への発展に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2022年12月9日(金)公開のACS Omega誌に掲載されました。
論文名:Discovery of α-L-glucosidase raises the possibility ofα -L-glucoside in nature (α-L-グルコシダーゼの発見により、自然界にα-L-グルコ シドが存在する可能性が出てきた)
URL:https://doi.org/10.1021/acsomega.2c06991
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