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肺癌における免疫を介したEGFR-TKI耐性の解明~EGFR-TKI耐性を克服する新しい治療選択肢に期待~(医学研究院 助教 野口卓郎)

2023年1月5日

ポイント

●EGFR-TKI治療でEGFR変異陽性肺癌細胞のCD24発現が上昇することを発見。
●EGFR-TKIで腫瘍細胞から放出されるcfDNAが免疫逃避的な腫瘍微小環境を形成する可能性。
●肺癌に対するEGFR-TKI耐性を克服する自然免疫系を標的とした新規治療開発に期待。

概要

北海道大学大学院医学院博士課程の椎谷研彦氏、同大学院医学研究院腫瘍内科学教室の野口卓郎助教、秋田弘俊教授(研究当時)らの研究グループは、同大学病院呼吸器内科、病理診断科などと共同研究を行い、EGFR-TKI治療がEGFR変異陽性肺癌において自然免疫シグナル伝達経路を介して免疫逃避的な腫瘍微小環境を形成していることを示し、EGFR変異陽性肺癌患者において自然免疫シグナル伝達経路が治療ターゲットとなる可能性を見出しました。

EGFR変異陽性肺癌は、EGFR-TKI治療によって自然免疫チェックポイントであるCD24発現を上昇させることが分かりました。抗CD24抗体を用いることで、EGFR-TKI処理したEGFR変異陽性肺癌細胞株に対してマクロファージによる抗腫瘍免疫応答(抗体依存性細胞貪食)が起きることを明らかにしました。続いて、EGFR-TKI処理したEGFR変異陽性肺癌細胞株はcfDNAの放出を著明に増加することを発見しました。THP-1単球を用いてcfDNASTING経路依存性にIRFシグナル伝達経路を活性化し、マクロファージのCXCL9産生能を阻害することを見出しました。

これらの結果から、EGFR変異陽性肺癌患者のEGFR-TKI耐性克服においてCD24cfDNAが新規標的となることが期待されます。

なお、本研究成果は、20221226日(月)公開のCancer Science誌に掲載されました。

論文名:EGFR inhibition in EGFR-mutant lung cancer cells perturbs innate immune signaling pathways in the tumor microenvironment(EGFR阻害はEGFR変異陽性肺癌の腫瘍微小環境における自然免疫シグナル伝達経路を撹乱する)
URL:https://doi.org/10.1111/cas.15701

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A)EGFR-TKI処理で、EGFR変異陽性肺癌細胞株の細胞表面CD24発現が上昇した。
(B)ヒトマクロファージは、EGFR-TKI処理したEGFR変異陽性肺癌に対して、抗CD24抗体を介して抗体依存性細胞貪食を起こした。