2023年1月16日
北海道大学
東北大学
ポイント
●国際協力による観測ロケットを用いた微小重力実験を行い、宇宙ダストの形成初期過程を再現。
●宇宙ダストは、ナノ領域の特異性で理解できる非古典的な経路で形成することを発見。
●宇宙における物質進化と、関連する多くの天体現象の理解に繋がる成果。
概要
北海道大学低温科学研究所の木村勇気准教授は、東北大学大学院理学研究科の田中今日子客員研究員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の稲富裕光教授、ドイツのブラウンシュバイク工科大学のユルゲン ブルム教授らと共に、スウェーデン宇宙公社の観測ロケットMASER 14を用いた微小重力実験を行い、宇宙ダストが非古典的な核生成によって形成することを解明しました。この実験は、JAXAの小規模計画としてドイツ航空宇宙センターとの国際協力のもとに実施しました。
宇宙には100 nm以下のダストと呼ばれるナノ粒子が多量に存在していますが、そのサイズや構造などの特徴を理論的に説明することはできていませんでした。本研究では、独自の実験装置を観測ロケットに搭載して、微小重力下で宇宙ダストの一種である、中心に炭化チタンのナノ結晶を持った炭素質の粒子の形成過程を再現しました。その過程を本研究のために開発した光干渉装置で調べたところ、宇宙ダストの形成には微小な世界でだけ見られるナノ現象の一つである融合成長など、三段階のプロセスから成る非古典的な経路で形成することを明らかにしました。これは、宇宙ダストの特徴を理論的に説明する手法の確立に繋がると共に、隕石中に見つかるプレソーラー粒子の形成過程や天体観測で検出されるダストの形成過程に新たな解釈を与える成果です。
なお、本研究成果は、2023年1月14日(土)にScience Advances誌に掲載されました。
論文名:Nucleation experiments on a titanium-carbon system imply nonclassical formation of presolar grain(チタンー炭素系の核生成実験はプレソーラー粒子の非古典的な形成過程を示唆)
URL:https://doi.org/10.1126/sciadv.add8295
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