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長門構造帯は日本最古級の地質体の一部~日本列島初期の基盤岩の起源と形成史の解明に貢献~(総合博物館 助教 北野一平)

2023年1月18日

ポイント

●長門構造帯の構成岩石(変成岩類及び花崗岩類)の正確な年代決定に初めて成功。
●長門構造帯は日本最古級の地質体である黒瀬川構造帯の一部であることを解明。
●日本列島初期の基盤岩類は南中国地塊の活動的縁辺域で形成した可能性を推察。

概要

北海道大学総合博物館の北野一平助教、九州大学の小山内康人名誉教授、同大学大学院比較社会文化研究院の中野伸彦准教授らの研究グループは、山口県西部に分布する長門構造帯の構成岩石(変成岩類及び花崗岩類)から初めてジルコンのU-Pb同位体年代測定を行い、長門構造帯が国内最古級の地質体である黒瀬川構造帯に帰属する可能性を見出しました。

長門構造帯は従来、K-Ar系放射年代測定法などの解析結果により、国内では古い地質体であることが知られていましたが、その年代値の正確度には議論の余地がありました。研究グループは信頼度の高いジルコンU-Pb同位体年代測定を初めて実施し、長門構造帯の変成岩類(角閃岩、片岩、石灰珪質岩)及び花崗岩類(トーナル岩)の形成年代を正確に決定しました。その結果、46千万年前の火成岩を起源とする角閃岩、47千万年前~46千万年前の火成活動で形成したトーナル岩、246千万年前~4億年前の堆積岩を起源とする片岩と石灰珪質岩であることを解明しました。従来、長門構造帯は飛騨外縁帯の西方延長とみなされてきましたが、本研究で見出された長門構造帯の変成岩類及び花崗岩類の含有鉱物の組み合わせとジルコン年代から、長門構造帯は日本最古級の地質体である黒瀬川構造帯の一部であることが示唆されました。そして、長門構造帯と黒瀬川構造帯に産する日本列島初期の基盤岩類は南中国地塊の活動的縁辺域で形成した可能性が推察されました。

なお、本研究成果は、日本時間20221217日(土)にJournal of Mineralogical and Petrological Sciences誌でオンライン公開されました。

論文名:U-Pb zircon ages of metamorphic rocks and granitoids from the Nagato Tectonic Zone in Yamaguchi, southwest Japan: Implication for the geological correlation with the Kurosegawa Tectonic Belt(西南日本山口県の長門構造帯に産する変成岩類及び花崗岩類のジルコンU-Pb年代:黒瀬川構造帯との地質学的関連性の示唆)
URL:https://doi.org/10.2465/jmps.220630

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(左)長門構造帯に産する蛇紋岩中のトーナル岩
(右)長門構造帯、飛騨外縁帯、黒瀬川構造帯の地理的位置関係