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イカと合成高分子を複合した耐破壊性ハイドロゲルを開発~天然物由来の異方的構造・性質を持つ柔軟複合材料~(先端生命科学研究院 准教授 中島 祐)

2023年1月20日

ポイント

●天然物であるイカと合成高分子の複合化による異方的ソフト&ウェット材料を開発。
●イカの異方的構造と複合構造との相乗効果により、極めて優れた耐破壊性を実現。
●半生体由来の壊れにくい柔軟材料として、人工腱などへの応用が期待。

概要

北海道大学大学院生命科学院博士後期課程の大村 将氏、同大学院先端生命科学研究院・同創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の中島 祐准教授、及び龔 剣萍(グン チェンピン)教授らの研究グループは、天然物であるイカを合成高分子と複合化することで、イカの異方的構造を反映した力学特性を持つ耐破壊性の複合ゲルを開発しました。

材料を壊れにくくする一般的な手法として、異なる性質を持つ複数の素材を組み合わせた「複合構造」や、材料構造に方向性を持たせる「異方性」の導入が知られています。一方、高分子ハイドロゲル(以下、単にゲル)は柔軟で水を含んだゼリーに似た材料であり、生体軟組織とよく似た特徴を持つことから生体代替材料・医療材料として期待されています。しかし、一般的なゲルはゼリーや豆腐のように極めて壊れやすい材料であり、丈夫なゲルを合成する手法の開発が求められていました。

研究グループは本課題を解決するため、天然の異方的生体軟組織と合成高分子の複合化に着目しました。本研究では、生体組織としてイカを用いました。イカを材料の視点からとらえると、水を含み、内部に方向性を持った筋線維を有する異方性のハイドロゲルと言えます。研究グループは、イカの内部に親水性の合成高分子を導入して複合化し、イカをベースとした柔軟な複合ゲルを得ました。本ゲルはその「異方性」と「複合構造」の相乗効果により、亀裂が極めて進みにくいという優れた耐破壊性を示すことが分かりました。本技術は、人工腱などの丈夫さが求められる生体代替材料の創製に繋がると期待されます。

なお、本研究成果は、2023120日(金)公開のNPG Asia Materials誌にオンライン掲載されました。

論文名:Squid/synthetic polymer double-network gel: elaborated anisotropy and outstanding fracture toughness(精緻な異方性と傑出した耐破壊性を有する、イカと合成高分子の複合によるダブルネットワークゲル)
URL:https://www.nature.com/articles/s41427-022-00454-9

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本研究のコンセプト図。イカと合成高分子の複合によって耐破壊性ゲルが得られることを、合成高分子の鎧をまとったイカによって表現。