新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 特別天然記念物・アホウドリ2種の交雑の歴史を解明~求められる2種それぞれの独自性を保つ保全政策~(総合博物館 教授 江田真毅)

特別天然記念物・アホウドリ2種の交雑の歴史を解明~求められる2種それぞれの独自性を保つ保全政策~(総合博物館 教授 江田真毅)

2023年2月16日

ポイント

●アホウドリは伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」を内包。
●両種のつがい形成と交雑は個体数が少なかった時期に進んだ可能性が高いと判明。
●近年両種のつがいはほとんど形成されておらず、今後も両者は別種として維持されると推定。

概要

北海道大学総合博物館の江田真毅教授らと山階鳥類研究所の研究グループは、国の特別天然記念物・アホウドリの遺伝的解析から、アホウドリ2種の交雑の歴史を解明しました。

アホウドリは隠蔽種を含み、伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」の2種からなると考えられています。一方、鳥島の新コロニー(集団繁殖地)では、標識足環のある鳥島生まれの個体と、尖閣諸島生まれの可能性がある標識足環のない個体がつがいを形成しており、両種が交雑している可能性が考えられてきました。

本研究では、①鳥島の従来コロニー生まれの雛、②標識足環のない鳥、及び➂片親または両親が標識足環のない鳥島の新コロニー生まれの雛、のDNAを解析しました。その結果、鳥島の従来コロニー生まれの雛(①)と尖閣諸島由来と考えられる標識足環のない鳥(②)は基本的に異なる遺伝的集団に属し、両者が別種であることが支持されました。

また、片親が標識足環のあるつがいから生まれた雛(➂の一部)もいずれかの遺伝的集団に由来する遺伝子を高頻度で持つと推定されました。一方、従来コロニー生まれの雛の一部は両方の遺伝的集団に由来する遺伝子を中程度に持ち、交雑個体と考えられました。現在、尖閣諸島生まれと推定される標識足環のない個体は新コロニーでのみ観察されていることから、2種間のつがい形成は主に個体数が少なかった時期におこなわれ、現在はほとんどおこなわれていないと推定されました。両種は同じ場所で繁殖しても基本的にそれぞれ同じ種の鳥をつがい相手に選ぶため、今後も別種として維持されると考えられます。

なお、本研究成果は、2023216日(木)にAvian Conservation and Ecology誌にオンライン公開されました。

論文名:Evidence of historical pairing between two cryptic species of Short-tailed Albatross(アホウドリの隠蔽種間における歴史的なつがい形成の証拠)
URL:https://doi.org/10.5751/ACE-02353-180103

詳細はこちら


伊豆諸島鳥島のアホウドリ成鳥(左から「アホウドリ」メス、「アホウドリ」オス、「センカクアホウドリ」メスが2羽)。(写真撮影:今野美和)。