2023年2月10日
ポイント
●宿主RNAメチル基転移酵素MTr1がインフルエンザウイルスの複製に不可欠であることを解明。
●MTr1阻害化合物の取得に成功。
●薬剤耐性ウイルスが出現しない、新たなインフルエンザ治療薬の開発に期待。
概要
北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の五十嵐学准教授、ボン大学の塚本雄太研究員、加藤博己教授らの国際共同研究グループは、インフルエンザウイルスの複製に必須の宿主因子を同定し、インフルエンザの新たな治療標的を見出しました。
現在、わが国では抗インフルエンザウイルス薬として、7種類の抗インフルエンザウイルス薬が認可されています。しかし、これらの薬剤は特定のウイルスタンパク質に直接作用するため、ウイルス遺伝子の変異で薬剤耐性ウイルスが出現する弱点があります。
今回、研究グループは、インフルエンザウイルスの複製に宿主細胞のRNAメチル基転移酵素MTr1が不可欠であることを明らかにしました。また、計算機を活用した既存薬ライブラリーのスクリーニングによりMTr1阻害化合物を同定し、宿主因子であるMTr1の機能を阻害することでインフルエンザウイルスの複製を特異的に抑制できることを示しました。
今後MTr1を標的とした、薬剤耐性ウイルスが出現しない、新たな抗インフルエンザウイルス薬開発への展開が期待されます。
なお、本研究成果は、2023年2月9日(木)公開のScience誌にオンライン掲載されました。
論文名:Inhibition of cellular RNA methyltransferase abrogates influenza virus capping and replication(細胞RNAメチルトランスフェラーゼの阻害はインフルエンザウイルスのキャッピングと複製を抑制する)
URL:https://www.science.org/doi/10.1126/science.add0875
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