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熱伝導率を制御するトランジスタ、実用化へ王手~熱の伝わり方を電気スイッチで切り替える技術に向けた大きな前進~(電子科学研究所 教授 太田裕道)

2023年2月22日

ポイント

●実用化可能な全固体電気化学熱トランジスタの作製に成功。
●従来の液体を用いた熱トランジスタとそん色ない、熱伝導率のオン/オフ比=4。
●熱の伝わり方を電気スイッチで切り替える技術に向けた大きな前進。

概要

北海道大学電子科学研究所の太田裕道教授らの研究グループは、熱の伝わり方を電気スイッチで切り替える全固体電気化学熱トランジスタを実現しました。半導体トランジスタが電圧で半導体中を流れる電流を制御するように、熱のトランジスタは電気的に材料の熱伝導率を制御するデバイスです。2014年に最初の電気化学熱トランジスタが報告されて以来、いくつかの電気化学熱トランジスタが提案されましたが、いずれも液体(電解液やイオン液体)を用いることから、液漏れの点で実用化には明らかに不適でした。

本研究では、液体を一切使用しない全固体電気化学熱トランジスタを開発するため、結晶構造を維持したまま酸素含有率が変えられるコバルト酸ストロンチウム(SrCoOx2x≤3)薄膜と、酸化物イオン伝導性固体電解質を組合せました。電気化学的酸化・還元を行った結果、オン時の高い熱伝導率~3.8 W/m Kとオフ時の低い熱伝導率~0.95 W/m K(オン/オフ熱伝導率比4)を繰り返し切替えることに成功しました。このオン/オフ比は電解液やイオン液体などの「液体」を用いた熱トランジスタと比較してそん色ない値です。将来的には電気制御できる熱のシャッターなどの熱制御デバイスとしての応用が期待されます。

なお、本研究成果は、2023221日(火)公開のAdvanced Functional Materials誌にオンライン掲載されました。

論文名:Solid-State Electrochemical Thermal Transistors(全固体電気化学熱トランジスタ)
URL:https://doi.org/10.1002/adfm.202214939

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全固体電気化学熱トランジスタ:SrCoOx薄膜を電気化学的に酸化・還元することで、熱伝導率をOFF 0.95 W/mK(低熱伝導率)からON 3.8 W/mK(高熱伝導率)に可逆的に切替えることができる。