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中央構造線誕生の秘密に迫る~巨大内陸断層の形成過程を解明~(北海道大学名誉教授 竹下 徹)

2023年3月3日

北海道大学
広島大学

ポイント

●中央構造線に沿うマイロナイト(流動変形した岩石)帯の形成温度の空間変化の推定に成功。
●複数のマイロナイト帯の内、上昇・冷却時に最後まで活動したものが中央構造線であると判明。
●世界の巨大内陸断層の起源を説明可能な新説で、本分野研究の進展に期待。

概要

北海道大学大学院理学研究院の竹下 徹教授(当時)及び同大学院理学院博士後期課程学生のドン バン ブイ氏(当時)、広島大学大学院先進理工系科学研究科の安東淳一教授らの研究グループは、中央構造線に沿うマイロナイト帯中の歪の局所化過程を明らかにしました。

これまで、成熟した巨大内陸断層のモデル断面は示されてきましたが、どのような過程を経て断層が成熟したのかは良く分かっておらず、特に岩石の流動領域での歪の局所化過程が不明でした。研究グループは、この巨大断層の歪の局所化過程を解明するため、中央構造線(白亜紀後期に形成され、現在は隆起・削剥されて地表に露出している化石断層)に沿う花崗岩類起源のマイロナイトを調べました。

三重県西部に分布する中央構造線と関連するマイロナイト帯は、異なる原岩、及び異なる石英組織で特徴付けられる3帯に分帯され、また、それらは互いに逆断層で接していることを明らかにしました。さらに、マイロナイト帯では上位から下位へ上昇に伴う冷却が進行し、変形が停止して微細組織が凍結されたことが分かりました。変形温度はI帯の最上位からIII帯の最下位まで約500度から約300度まで減少し、中央構造線近傍には厚さ50m以下のウルトラマイロナイト帯が特徴的に発達しています。ウルトラマイロナイト帯はさらに脆性―塑性転移点を超えて上昇し、脆性破壊を被り中央構造線に発展しました。

この結果、より上位に転置されたマイロナイト帯ほど早期に上昇・冷却したため、結果的にIII帯の最下位で最後まで高温が保持され、変形が継続したことで中央構造線が誕生したと明らかになりました。これは、内陸の巨大断層の発展過程についての新説となるもので、世界の陸上の巨大断層の起源の研究を進展させることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023214日(火)にTectonophysics誌でオンライン公開されました。

論文名:Development of the Median Tectonic Line-related shear zone, southwest Japan: An analysis of strain localization processes(西南日本の中央構造線と関連する剪断帯の発展:歪の局所化過程の解析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.tecto.2023.229751

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