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二次性副甲状腺機能亢進症治療薬が骨の構造と強度を改善~慢性腎不全動物モデルを用いた検証で明らかに~(歯学研究院 准教授 長谷川智香)

2023年3月20日

ポイント

●慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症の骨病態(皮質骨多孔化)の発症メカニズムを解明。
●エボカルセトを投与したラットでは、皮質骨多孔化が抑制され、骨強度が著明に改善。
●二次性副甲状腺機能亢進症患者の骨病態に対するエボカルセトの作用検証が期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の長谷川智香准教授、網塚憲生教授らの研究グループは、協和キリン株式会社との共同研究により、同社が開発したカルシウム受容体作動薬エボカルセトが、慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症(CKD-SHPT)モデル動物で生じる骨病態を改善させることを明らかにしました。

腎臓が障害を受けると、血液中のカルシウムやリンなどのミネラルバランスが崩れます。CKD-SHPTでは、血中のミネラルバランスを調節する副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に産生され、これらが骨にも影響を及ぼし、骨の吸収と形成を活発にさせます。さらに、骨の塊である皮質骨に沢山の空隙を作り(皮質骨多孔化)、骨の強度を低下させるため骨折しやすくなります。

本研究において、CKD-SHPTラットでは、血中に多量に存在するPTHとリンが相加的に作用することで、皮質骨に埋め込まれた骨細胞の異常や細胞死を誘導し、周囲の骨を溶解すること、また、これを起点として皮質骨多孔化が生じることが明らかになりました。これに伴い、骨強度の低下が認められました。一方、エボカルセトを投与したラットでは、皮質骨多孔化が抑制され、骨強度が著明に改善していました。このことから、エボカルセトは、血中のPTH濃度を低下させることで、PTHとリンの相加作用を断ち切り、CKD-SHPTラットの骨病態を抑制する可能性が示されました。

なお、本研究成果は2023131日(火)公開のEndocrinology誌にオンライン掲載されました。

論文名:Evocalcet Rescues Secondary Hyperparathyroidism-driven Cortical Porosity in CKD Male Rats(エボカルセトは慢性腎不全ラットで誘導された二次性副甲状腺機能亢進症に伴う皮質骨多孔化を抑制する)
URL:https://doi.org/10.1210/endocr/bqad022

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本研究成果から想定される、二次性副甲状腺機能亢進症モデル動物でみられる骨病態の発症メカニズムと、カルシウム受容体作動薬エボカルセトによる骨病態改善作用の機序。