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異なる細胞小器官が協同する新しい機構を解明~オルガネラ病原因解明への貢献に期待~(医学研究院 教授 大場雄介)

2023年3月20日

ポイント

●細胞内の小器官である「ミトコンドリア」と「エンドソーム」とが相互作用することを発見。
●この相互作用によりエンドソームが酸性に傾き、成熟することを解明。
●オルガネラ病の病態解明や治療法開発に期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院細胞生理学教室の大場雄介教授、藤岡容一朗講師、佐藤 絢学術研究員らの研究グループは、細胞内の小器官(オルガネラ)であるミトコンドリアとエンドソームとが相互作用することを発見しました。そして、その相互作用をPI3KVDAC2という2つの分子が担うこと、さらにこの相互作用により「エンドソームの成熟化」と呼ばれる現象が促進されることも見出しました。

研究グループではこれまでに、「Ras-PI3Kシグナル」と呼ばれる細胞内の情報伝達経路が、細胞が外から物質を取り込む現象の一つ「エンドサイトーシス」の制御に関与することと、その制御にはPI3K分子に存在するRAPEL配列が必要であることを報告しています。研究グループはこのメカニズムを明らかにするため、RAPEL配列にどのような因子が結合するか調べたところ、予想外にも、別のオルガネラであるミトコンドリアに存在するタンパク質「VDAC2」が同定されました。

さらに、エンドソームにあるPI3KとミトコンドリアのVDAC2RAPEL配列を介して結合することで、Ras-PI3K複合体をもつエンドソームがミトコンドリアに繋ぎ留められ、Ras-PI3K複合体はエンドソームに局在できることを、バイオイメージングを用いて明らかにしました。また、このミトコンドリア−エンドソーム間の相互作用により、エンドソームの成熟化が促進されることを示し、これにはVDAC2が必須であることも解明しました。

ミトコンドリアやエンドソームの機能障害が関連する疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、がんなど多岐にわたり、未だ原因不明の疾患も少なくありません。本研究成果により、これらの疾患の解明や治療困難な疾患に対する新たな知見を提供することが期待されます。

なお本研究成果は、2023311日(土)にCell Reports誌にオンライン掲載されました。

論文名:Interaction Between PI3K and the VDAC2 Channel Tethers Ras-PI3K-positive Endosomes to Mitochondria and Promotes Endosome Maturation(PI3KとVDAC2チャネルの相互作用により、Ras-PI3K陽性エンドソームをミトコンドリアにつなぎとめ、エンドソームの成熟を促進する)
URL:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2023.112229

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ミトコンドリアとエンドソームの協同。ミトコンドリア−エンドソーム間の相互作用により、エンドソームの成熟化が促進される。