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3Dプリンターで生体血管に近い血管模型の作製に成功~カテーテル治療のシミュレーションへの貢献に期待~(北海道大学病院 助教 森田 亮)

2023年4月12日

ポイント

●透明柔軟な生体血管に近い血管模型の作製に成功。
●透明・柔軟な光硬化樹脂(レジン)の物性を解明。
●模型を用いたカテーテル治療の医学的手技シミュレーションへの貢献に期待。

概要

北海道大学病院放射線診断科の森田 亮助教、同大学大学院先端生命科学研究院の野々山貴行准教授らの研究グループは、高難度医療技術であるカテーテル治療の医学的手技シミュレーション用の生体血管に類似した血管模型を開発することを目的に、3Dプリンターで作製した透明・柔軟な樹脂板と豚の生体動脈の機械的性質を比較し、生体血管に近い血管模型を3Dプリンターから直接作成することに成功しました。

3Dプリンターには様々な構造の形状を容易に再現できる特性がありますが、滑りや弾性などの機械的特性も含めて、生体血管に近い血管模型を3Dプリンターから直接作製できたという報告はまだありません。その実現を目指して、3Dプリントした透明・柔軟な光硬化樹脂(レジン)の機械的特性(弾性率・粘着性・透明性・動摩擦係数)を豚動脈血管と比較検討しました。

結果、樹脂は樹脂の硬化時間に関係なく、動脈より硬いことが明らかになりました。樹脂の可視光線透過率および接着強度は、樹脂の硬化時間の増加とともに減少することが分かりましたので、樹脂の硬化時間を短く設定することで、透明性を保ったまま、粘着性を低下させることができます。シリコンコーティングした樹脂表面の動摩擦係数は、シリコーン層の膜厚が1.6-2μmの場合に動脈と同程度であり、これを目安にしたコーティングが適切であることがわかりました。シリコンコーティングは樹脂に生体動脈と同等の滑りを付与する重要なプロセスです。

今回報告した素材・作製方法を用いることで、生体血管に近い血管模型を3Dプリンターから直接作製できるため、医学的手技のシミュレーションや非侵襲的技術伝承への貢献が期待できます。

なお、本研究成果は、2023114日(金)公開のJournal of Vascular and Interventional Radiology誌にオンライン掲載されました。

論文名:Mechanical Properties of 3D-Printed Transparent Flexible Resin Used for Vascular Model Simulation Compared with Porcine Arteries.(医学的手技シミュレーション用の血管模型作製に使用した3Dプリントされた透明・柔軟な樹脂の力学的特性についての豚動脈との比較)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jvir.2023.01.008

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