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地表と地下40 kmの間を往復した岩石の履歴は語る~沈み込み開始時の地温勾配変化を解明~(北海道大学名誉教授 竹下 徹)

2023年4月14日

北海道大学
岡山理科大学

ポイント

●沈み込み境界に沿って地下深くまで沈み込んだ海洋底構成岩石の圧力温度履歴の推定に成功。
●異なる圧力温度履歴を持つ海洋底構成岩石が沈み込み境界で合体したと判明。
●圧力温度履歴は沈み込み開始時の地温勾配変化を反映し、世界との比較研究の進展に期待。

概要

北海道大学大学院理学研究院の竹下 徹教授(当時)及び岡山理科大学フロンティア理工学研究所の今山武志准教授らの研究グループは、白亜紀の北海道中央部にかつて存在した沈み込み帯で、沈み込み開始時の地温勾配変化を解明しました。

日本列島は現在及び過去を通じて海洋プレートが沈み込んでいる典型的な島弧―海溝系で、北海道中央部には白亜紀(約1億年前)の海溝が存在したことが神居古潭変成岩(沈み込み境界で形成された変成岩)の存在から判明しています。また、沈み込み開始直後に形成されると考えられている蛇紋岩メランジュとそれに含まれる海洋底構成岩石起源の高度変成岩テクトニックブロック(角閃岩、青色片岩)の存在も知られていました。

研究グループは、これらの岩石の鉱物組み合わせ、及び鉱物の組成累帯構造を解析することにより、岩石の形成圧力温度条件及びその履歴を調べました。

研究地域に産するざくろ石角閃岩はシュードセクション解析から沈み込み開始時に40 km深度で、15-17 °C/kmの地温勾配で変成作用を経験した後、13 °C/kmの地温勾配で重複変成を受け、後者の地温勾配で変成した青色片岩と合体しました。さらに、ざくろ石角閃岩及び青色片岩は、10 °C/kmの地温勾配で変成した通常の神居古潭変成岩と合体し、ともに上昇しました。

この事実は、圧力温度履歴として岩石に記録されています。地温勾配の低下で示される沈み込み境界の冷却は約2500万年の間に生じ、新しく出来た沈み込み境界が定常状態になるまでに生じたと解釈されました。

以上、沈み込み開始時には比較的高い地温勾配のもとで変成岩が形成され、後に冷却後に沈み込んで来た岩石と合体することが岩石の記録する圧力温度履歴から明らかとなりました。この結果は、世界の沈み込み境界過程と比較出来、研究をより進展させることが期待されます。

なお、本研究成果は、202339日(木)にJournal of Metamorphic Geology誌でオンライン公開されました。

論文名:Pressure-temperature paths of tectonic blocks in mélange: Recording thermal evolution of a subduction channel at an initial stage of subduction(メランジェ中のテクトニックブロックの圧力温度履歴:沈み込み初期の沈み込みチャネルの温度発展の記録)
URL:https://doi.org/10.1111/jmg.12718

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