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空気下、室温で実施可能な超高速バーチ還元反応を開発~ボールミルを用いたメカノケミカル法により、従来の溶液合成の制限を克服~(創成研究機構化学反応創成研究拠点 教授 伊藤 肇、准教授 久保田浩司)

2023年4月5日

ポイント

●ボールミルを用いることで、空気下かつ室温で簡単に実施できるバーチ還元の開発に成功。
●従来法と比較して、最大150倍程度の反応加速効果が見られ、多くの場合1分以内で反応が完結。
●環境調和型の新しい物質生産プロセスの拡充並びに生産プロセスのコストダウンの実現に期待。

概要

北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)、同大学院工学研究院の伊藤 肇教授、久保田浩司准教授らの研究グループは、ボールミルという粉砕機を用いたメカノケミカル法を用いることで、空気下及び室温で簡単に実施できるバーチ還元反応の開発に成功しました。

1944年に初めて報告されたバーチ還元は、芳香族化合物に対して液体アンモニア/アルコールの混合溶媒中、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を作用させると1,4-シクロヘキサジエン類に誘導できる反応です。これまで生理活性物質や天然物の合成などに幅広く用いられており、有機合成化学において重要な反応の一つです。しかし、液体アンモニアを使用することによる煩雑な実験操作や厳密な温度制御が必要でした。最近、液体アンモニアを用いない改良型も報告されていますが、依然として高純度の反応溶媒、禁水条件、厳密な温度制御や不活性ガス雰囲気が必要であり、より簡便に実施できる方法の確立が求められていました。

研究グループは、金属リチウムを用いるバーチ還元反応が、ボールミルを用いたメカノケミカル法により室温かつ空気下で簡単に実施できることを見出しました。また、従来の溶液条件と比較して20倍から150倍程度の反応加速効果が見られ、ほとんどの場合1分以内で反応が完結します。ボールミルによって金属リチウムが細かく砕かれることで、基質への電子移動が加速したためと考えられます。今後、超高効率かつ環境に優しい省溶媒メカノケミカル有機合成プロセスの開発が期待できます。

本研究成果は、2023321日(火)、Angewandte Chemie International Edition誌にオンライン掲載されました。

論文名:Mechanochemical Approach for Air-Tolerant and Extremely Fast Lithium-Based Birch Reductions in Minutes(メカノケミカル法を用いた空気下かつ超高速で進行し数分以内で完結する金属リチウムによるバーチ還元)
URL:https://doi.org/10.1002/anie.202217723

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空気下かつ室温で実施できるメカノケミカルバーチ還元反応を開発した。反応セットアップの簡便化に加え、従来の溶液条件よりも最大150倍程度の反応加速効果があり、多くの場合1分以内に完結する。