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睡眠不足が腸内細菌叢を乱すメカニズムを初めて解明~αディフェンシンによる睡眠障害の改善に期待~(先端生命科学研究院 教授 中村公則)

2023年4月12日

ポイント

●人の睡眠不足に伴う腸のαディフェンシン分泌量低下と腸内細菌叢の破綻の関係を初めて解明。
●睡眠不足が腸内細菌叢を錯乱し、代謝物である短鎖脂肪酸の低下を招くメカニズムを解明。
●世界的な健康問題となっている睡眠障害に対する予防や新規治療としての進展に期待。

概要

北海道大学大学院先端生命科学研究院の中村公則教授、同大学院医学研究院の玉腰暁子教授らの研究グループは、腸管自然免疫の作用因子である抗菌ペプチドαディフェンシンが睡眠時間の短い人ほど低いことを示し、そのことが睡眠不足における腸内細菌叢の破綻と免疫系の機能に重要な菌代謝産物である酢酸や酪酸など短鎖脂肪酸の低下に関与することを初めて明らかにしました。

北海道に居住する健康な成人を対象にした本研究は、睡眠不足とαディフェンシンによる腸内細菌叢の制御に焦点を当てることで、睡眠時間と腸内細菌叢さらには菌代謝産物とのこれまで全く知られていなかったメカニズムを明らかにした画期的な成果です。

睡眠は様々な生理機能の調節において極めて重要であり、睡眠不足によって腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)が生じ、それが精神的及び身体的不調を起こして様々な疾患リスクの亢進に関与することがこれまでに示唆されていましたが、睡眠不足がdysbiosisを誘導するメカニズムは分かっていませんでした。この研究は、これまで不明だった短眠に伴って腸内細菌叢が破綻するメカニズムとしてαディフェンシンの関与を初めて示しました。睡眠不足は腸のαディフェンシン分泌低下と腸内細菌叢の組成及び機能の異常に関与することを明らかにし、脳腸相関から睡眠の新たな重要な視点を拓きました。

今後、この脳腸相関のメカニズムをターゲットとした睡眠障害に対する新規治療法の研究開発を通して、睡眠不足に伴う様々な疾患の克服から国民の健康寿命延伸に貢献することが期待されます。

なお、本研究成果は2023年321日(火)公開の国際学術専門誌Gut Microbesにオンライン掲載されました。

論文名:Shorter sleep time relates to lower human defensin 5 secretion and compositional disturbance of the intestinal microbiota accompanied by decreased short-chain fatty acid production(睡眠不足はαディフェンシンHD5量の低さ及び短鎖脂肪酸の産生量減少を伴う腸内細菌叢の破綻に関与する)
URL:https://doi.org/10.1080/19490976.2023.2190306

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αディフェンシン低下を介した睡眠不足における脳-腸-全身相関メカニズム