2023年4月20日
ポイント
●弥生文化におけるニワトリの継代飼育を初めて実証。
●日本列島最古のニワトリの骨の年代(紀元前3世紀~4世紀)を確定。
●コラーゲンタンパクの質量分析によるニワトリの骨の同定の有効性を実証。
概要
北海道大学総合博物館の江田真毅教授らと東京大学総合研究博物館、田原本町教育委員会の研究グループは、唐古・鍵遺跡(国指定史跡・奈良県田原本町)で見つかった骨の中から、日本列島最古のニワトリの雛の骨を発見しました。
ニワトリはもともと、東南アジアに生息するセキショクヤケイを飼い慣らしたものです。日本列島には弥生時代に導入されたと考えられていますが、その詳細な年代は明らかになっていませんでした。また、弥生時代のニワトリはその形態からほとんどが雄であり、日本列島ではほとんど繁殖させることができなかった可能性が考えられてきました。唐古・鍵遺跡では、弥生時代中期初頭と推定される溝からキジ科(ニワトリやキジ、ヤマドリを含むグループ)の雛の骨が4点みつかりました。しかし、形態的特徴からはニワトリのものかどうかは特定できませんでした。
そこで本研究では、唐古・鍵遺跡でみつかったキジ科の雛の骨2点を対象に、コラーゲンタンパクの質量分析による骨の種同定(=由来生物の特定)を実施しました。また、そのうち1点について放射性炭素年代測定による実年代の特定を実施しました。その結果、2点のキジ科の雛の骨はいずれもニワトリのものであることが分かりました。また雛の骨は紀元前3世紀~4世紀のものであることが確認されました。これらの結果から、少なくとも唐古・鍵遺跡ではこのころからニワトリが継代飼育されていたと推定されました。唐古・鍵遺跡は日本列島の弥生文化における最大規模の集落遺跡であることから、今回の結果は日本列島の弥生文化の集落でニワトリが広く継代飼育されていたとみなせるものではありません。今後、本研究で有効性が確認されたコラーゲンタンパクの質量分析を用いたキジ科の骨の同定が進められることで、弥生文化におけるニワトリ飼育の様相がより詳細に明らかになると期待されます。
なお、本研究成果は、2023年4月20日(木)、オンライン公開のFrontiers in Earth Science誌に掲載されました。
論文名:The earliest evidence of domestic chickens in the Japanese Archipelago(日本列島におけるニワトリの最古の証拠)
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/feart.2023.1104535/full
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