新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 血液を用いてヒグマの年齢が推定可能に!~クマ類の生態学的研究や保護管理への貢献に期待~(獣医学研究院 准教授 下鶴倫人)

血液を用いてヒグマの年齢が推定可能に!~クマ類の生態学的研究や保護管理への貢献に期待~(獣医学研究院 准教授 下鶴倫人)

2023年4月21日

ポイント

●飼育、野生ヒグマの血液を用いてDNAメチル化レベルに基づく新規年齢推定法を確立。
●少量の血液があれば高い精度で年齢推定が可能。
●クマ類の生態学的研究や保護管理への貢献に期待。

概要

北海道大学獣医学部(当時)の中村汐里氏、同大学大学院獣医学研究院の下鶴倫人准教授、京都市動物園・京都大学野生動物研究センターの伊藤英之特任研究員らの研究グループは、ヒグマにおける血液DNAのメチル化レベルに基づく新規年齢推定法を確立しました。

DNAメチル化とは遺伝情報を持つDNAへの修飾機構の一つであり、DNA塩基配列の変化を伴わずに遺伝子発現などに影響を及ぼします。近年、ヒトを始めとした様々な動物種において、DNAメチル化レベルが年齢とともに変化するDNA領域があることが明らかになっています。本研究では、年齢が明らかな飼育ヒグマ34個体、野生ヒグマ15個体から血液を採取し、12領域のDNAメチル化レベルを解析しました。その結果、4領域において年齢とメチル化レベルの間に強い相関が認められ、それらを利用して年齢推定モデルを作成しました。最も精度が高いモデルは、1領域(4ヶ所のメチル化部位を含む)のみを利用したモデルで、推定誤差は約1年でした。本研究成果により、血液からヒグマの年齢を高精度で推定可能になりました。従来クマ類では抜歯した歯を用いた年齢推定法が広く用いられてきましたが、本手法はより簡便かつ高精度で、動物への侵襲性が低いという利点があります。本研究成果は、クマ類の生態学的研究や保護管理の一助となるほか、毛や糞を対象とした類似手法の開発、ヒグマ以外のクマ類への応用など、様々な発展が期待されます。なお、本研究成果は、2023323日(木)公開のMolecular Ecology Resources誌に掲載されました。

論文名:Age estimation based on blood DNA methylation levels in brown bears(ヒグマにおける血液DNAメチル化レベルに基づく年齢推定)
URL:https://doi.org/10.1111/1755-0998.13788

詳細はこちら


ヒグマにおける血液DNAメチル化に基づく年齢推定モデル
(実線は推定年齢=実年齢を、実線と点線の距離は推定年齢と実年齢の差の絶対値の平均を示す)
写真は10歳のメスヒグマ(右)と0歳の子供(左)