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イヌ悪性黒色腫に対して放射線治療との併用で抗PD-L1抗体の効果が高まることをはじめて報告~イヌ用免疫チェックポイント阻害薬のより良い使用法の実現に期待~(獣医学研究院 教授 今内 覚)

2023年6月2日

北海道大学
東北大学

ポイント

●肺転移を持つ口腔内悪性黒色腫に罹患したイヌにおいて抗PD-L1抗体の治療効果を回顧的に解析。
●放射線治療歴の有無やそのタイミングが抗PD-L1抗体の治療効果と相関することを発見。
●抗PD-L1抗体治療開始前に放射線治療を受けることでより良い治療効果が得られる可能性。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の出口辰弥特任助教、前川直也特任助教及び今内 覚教授、東北大学大学院医学系研究科の加藤幸成教授らの研究グループは、肺転移を持つ口腔内悪性黒色腫に罹患したイヌにおいて、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体の治療効果を回顧的に解析し、抗PD-L1抗体治療開始前に放射線治療を受けていた群でより良い治療効果が得られたことを明らかにしました。

イヌの腫瘍は外科手術や放射線療法などによって治療されますが、ヒト医療における現状と同様に完治に至らないケースも多く、新規治療法の確立が望まれています。研究グループではこれまでに、抗PD-L1抗体が一部のイヌにおいて腫瘍の退縮をもたらすことを北海道大学動物医療センターにおける臨床研究として世界に先駆けて報告してきました。しかし、奏効が得られるイヌは一部にとどまっていました。

そこで本研究では、これまでに抗PD-L1抗体による治療を行った、肺転移のある口腔内悪性黒色腫のイヌについて回顧的な解析を行うことで、低分割放射線療法と抗PD-L1抗体療法の組み合わせがより良い治療効果に繋がるかを検討しました。その結果、放射線治療歴の有無やそのタイミングが抗PD-L1抗体の治療効果と相関することを発見しました。

本研究成果は、抗PD-L1治療の開始前に放射線治療を行うことで免疫療法の効果が増す可能性を示し、イヌでの免疫チェックポイント阻害薬のより良い使用法の解明に繋がる重要な知見となります。

なお、本研究成果は、202361日(木)公開のCancers誌にオンライン掲載されました。

論文名:Enhanced systemic antitumour immunity by hypofractionated radiotherapy and anti-PDL1 therapy in dogs with pulmonary metastatic oral malignant melanoma(低分割放射線療法と抗PD-L1治療は肺転移のある口腔内悪性黒色腫のイヌにおいて全身性の抗腫瘍免疫を増強する)
URL:https://www.mdpi.com/2072-6694/15/11/3013

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北海道大学動物医療センター前にて。
右から今内教授、高木教授、出口特任助教、前川特任助教、和泉博士。