新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 小脳と大脳基底核のもつ時間情報の違いが明らかに~リズム感を生みだす脳内機構~(医学研究院・脳科学研究教育センター 教授 田中真樹)

小脳と大脳基底核のもつ時間情報の違いが明らかに~リズム感を生みだす脳内機構~(医学研究院・脳科学研究教育センター 教授 田中真樹)

2023年6月28日

ポイント

●リズムを知覚しているときの脳深部の神経情報を解析。
●小脳は感覚予測、大脳基底核は運動準備の信号を強くもつことが判明。
●これらの脳部位の損傷による運動・知覚障害の病態理解と、対処法の開発に繋がることに期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院の亀田将史助教と田中真樹教授(脳科学研究教育センター兼務)らの研究グループは、リズム感を生み出す脳のしくみを明らかにしました。

音楽を聴いていると身体の一部が動いてしまうことがあるように、リズム知覚と同期運動は脳の中でリンクしています。実際、リズムを感じているときは身体を動かしていなくても、感覚野とともに高次の運動野や小脳、大脳基底核に活動の上昇が見られます。このことから、リズムを感じているときには、脳内に周期的な感覚予測と周期的な運動準備の、少なくとも2種類の情報があると考えられます。本研究では、サルがリズムを知覚している際に、小脳と大脳基底核がもつ情報を細胞ごとに調べました。その結果、小脳は感覚、大脳基底核は運動の情報をより強くもっていることが分かりました。小脳は周期的な外界の出来事の「内部モデル」を脳内に生成し、大脳基底核はこれに基づいた運動準備に関与すると考えられます。

小脳や大脳基底核が障害されると、歩行やタッピングなどの周期的でリズミカルな運動が困難になりますが、その神経機構は明らかではありません。これらの脳部位で行われている情報処理を理解することで、その原因と効果的な対処法がみつかるものと期待されます。

なお、本研究成果は、202366日(火)、米国科学アカデミー紀要(PNAS誌)にオンライン掲載されました。

論文名:Sensory and motor representations of internalized rhythms in the cerebellum and basal ganglia.(小脳と大脳基底核による内的リズムの感覚運動表現)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2221641120

詳細はこちら


本研究の概念図