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下水中の新型コロナウイルス濃度が医療機関における感染者数の指標になることを証明~医療機関の負荷をリアルタイムに推定するためのツールとしての下水疫学データの活用に期待~(工学研究院 准教授 北島正章、北海道大学病院感染制御部 部長・臨床教授 石黒信久)

2023年7月27日

ポイント

●札幌市の下水中新型コロナウイルス濃度と北大病院の新規感染者数の関連を2年間にわたり解析。
●札幌市の下水中ウイルス濃度は同じ週の北大病院の感染者数と高い相関を示すことを証明。
●定点把握移行後、下水疫学データは医療機関における感染者数を推定するツールとして有用。

概要

北海道大学病院感染制御部の石黒信久部長と鏡 圭介薬剤師及び検査・輸血部の豊嶋崇徳教授、同大学大学院工学研究院の北島正章准教授、札幌市下水道河川局の研究グループは、札幌市の下水中新型コロナウイルス濃度は北海道大学病院の新型コロナウイルス感染者数と高い相関を示すことを明らかにしました。

新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う感染者の全数把握から定点把握への切り替えに加えて、ワクチン接種率の向上や病原性の低い変異株の流行により不顕性感染者や軽症者の割合が増えることが予想され、臨床検査のデータからは新型コロナウイルス流⾏状況の実態把握が難しくなることが懸念されています。一方、下水中のウイルスを分析する下水疫学調査は、臨床検体に依存せずに集団レベルの感染状況を把握できるツールとして期待を集めていますが、個別の医療機関における検査負荷等の予測に対する活用については検証事例がありませんでした。そこで研究グループは、20212月から20232月にかけて2年間にわたりEPISENS-S法により測定した札幌市の都市下水中新型コロナウイルス濃度と北海道大学病院の新規感染者数を解析し、これらの間に高い相関関係があることを証明しました。下水疫学データは、医療機関における新型コロナウイルス感染者数を正確かつ迅速に推定するための情報として広く活用が期待されます。

なお、本研究結果は、2023725日(火)公開のScience of the Total Environment誌にオンライン掲載されました。

論文名:Association of wastewater SARS-CoV-2 load with confirmed COVID-19 cases at a university hospital in Sapporo, Japan during the period from February 2021 to February 2023(2021年2月から2023年2月の期間に札幌市内の大学病院で確認された新型コロナウイルス感染者と下水中新型コロナウイルス濃度との関連性)
URL:https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2023.165457

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札幌市の下水中新型ウイルス濃度と北海道大学病院の感染者数の相関関係の解析