2023年8月3日
ポイント
●サイトカインの一種であるインターロイキン-34が腫瘍内で免疫抑制を引き起こすことを確認。
●抗がん剤及び放射線の効果をインターロイキン-34が誘導する免疫抑制環境が弱めることを発見。
●インターロイキン-34を標的とした治療効果改善という、新規免疫治療コンセプトの確立に期待。
概要
北海道大学遺伝子病制御研究所の韓ナヌミ助教(研究当時)、清野研一郎教授らの研究グループは、がん細胞が分泌するインターロイキン-34(IL-34)が、腫瘍内の免疫環境を変えることで、がん細胞に直接作用する治療法の効果が大きく左右されることを解明しました。
抗がん剤や放射線治療といった古典的ながんの治療法は、がん細胞そのものに作用し、がん細胞を殺すことで抗腫瘍効果を発揮すると考えられてきました。しかし、これらの治療の効果には個人差があり、また同じ治療を続けるとだんだん効かなくなってくる、抵抗性の問題があります。そして、そのメカニズムは未だ完全に明らかにされたとは言えません。
本研究では、マウス大腸がん並びに乳がんモデルを用い、まず抗がん剤及び放射線治療の効果が発揮されるためにはT細胞の働きが重要であることを示しました。次に、IL-34が産生される腫瘍の中では、免疫抑制性マクロファージの数が増えている一方、T細胞の数並びに機能を発揮するための分子の発現が減少していることを見出しました。腫瘍細胞からIL-34が産生されない工夫をすると、抗がん剤並びに放射線治療の効果が著明に改善することを明らかにしました。
本結果は、抗がん剤並びに放射線治療に対する治療抵抗性とIL-34の関係を示すものであり、IL-34を標的とした新規免疫治療コンセプトの確立に繋がるものと期待されます。
なお本研究成果は、2023年7月24日(月)公開のOncoimmunology誌にオンライン掲載されました。
論文名:A mechanism of IL-34-induced resistance against cytotoxic anti-cancer therapies such as radiation by X-ray and chemotherapy by Oxaliplatin(がんに対する殺細胞性治療(放射線治療及び抗がん剤)におけるIL-34が誘導する治療抵抗性のメカニズム)
URL:https://doi.org/10.1080/2162402X.2023.2238499
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