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ボースグラスとフェルミグラスの実験的繰込み法を確立~未知なる超伝導物質発見への貢献に期待~(工学研究院 特任教授 丹田 聡)

2023年9月4日

ポイント

●超伝導発現の前駆現象であるボースグラスの有無が、実験的繰込み法により判別可能。
●ボースグラスとフェルミグラスの境目はユニバーサルな量子抵抗値であることを発見。
●この判別方法によって、未知なる超伝導物質発見への手がかりが容易に。

概要

北海道大学大学院工学研究院の丹田 聡特任教授ら(第一著者:高橋是清氏)の研究グループは、ボースグラスとフェルミグラスの実験的繰込み法を確立しました。これにより、超伝導物質の超伝導発現直前の電子状態の描像が明らかになりました。

最近身近になってきた超伝導物質は、温度を冷やすと電気抵抗がゼロになることが知られています。この超伝導物質に変化を加えて温度を冷やすと、逆に電気抵抗が大きくなって局在状態になる場合があります。この場合、この物質の電気を運ぶ電子が、金属のように一つの電子としてふるまっているのか(フェルミグラス状態)、超伝導の特徴であるペアの電子でふるまっているのか(ボースグラス状態)を電気抵抗から判別する方法はありませんでした。

研究グループは、超伝導物質の中で性質の異なるNd系銅酸化物高温超伝導体とPb薄膜の実験データを使い、電気抵抗の温度変化を繰込み法という解析手法を用いて詳細に調査しました。その結果、電子のふるまいの違いがはっきりと判別できることが分かりました。これは、いままで理論で使われてきた繰込み法を実験分野に応用することに成功したことを意味しています。さらに、物質によらず、このふるまいの境目(ボースグラスとフェルミグラスの境目)が、ユニバーサルな量子抵抗値であることを発見できました。

この結果の応用として、ある物質が超伝導を発現しない場合においても、電気抵抗にボースグラス状態が判別できれば、超伝導状態が得られる可能性を意味しています。

なお、本研究成果は、202381日(火)公開のScientific Reports誌に掲載されました。

論文名:Bose glass and Fermi glass(ボースグラスとフェルミグラス)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-023-39285-1

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2次元超伝導物質の模式的な相図。本記事の解析では、Disorder軸を変化させ、超伝導に達する前のボースグラスからフェルミグラスへの変化を、β関数を使った繰込み法にて解析(双方向赤矢印)。これらの境界抵抗値は、h/e2(赤い点)付近を示した。