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ニュートリノと光の相互作用"電弱ホール効果"をはじめて解明~ニュートリノは太陽内部や地球を素通りするが、太陽コロナは素通りしない~(北海道大学名誉教授 石川健三)

2023年9月15日

北海道大学
北海道科学大学

ポイント

●磁気プラズマ中のニュートリノと光の相互作用ハミルトニアンの導出に成功。
●太陽コロナ中のニュートリノの電磁遷移を解明。
●太陽コロナの物理解明の進展に期待。

概要

北海道大学の石川健三名誉教授(元大学院理学研究院教授)らの研究グループは、太陽コロナの内部で働くニュートリノと光の相互作用"電弱ホール効果"を理論的に解明し、これがニュートリノのエネルギーを光のエネルギーに変換し、太陽コロナに多量の熱を供給することを示しました。

ニュートリノは物質や宇宙を構成する素粒子で、太陽中心部における核融合で生成され、電磁気力と弱い相互作用を統一した電弱ゲージ理論で記述が可能です。当該理論においては、量子力学的な効果によってニュートリノと光の相互作用が生じますが、極めて弱い相互作用であり現実の物理現象には無関係であると見なされていました。つまり、ニュートリノは、太陽中心部でつくられるものの、太陽コロナや地球内部を素通りすると考えられてきたわけです。

しかし、今回の研究により「ニュートリノは中心部でつくられた後、一部が、コロナを通過する際、光と軽いニュートリノに崩壊する(ただし、地球内部では従来と同じ)。」ことが明らかになりました。どういうことかと言うと、同理論では極めて弱い相互作用とみなされていたニュートリノの光遷移を、今まで想像された値よりも10^{40}倍以上大きい確率にさせる「電弱ホール効果」という新たな相互作用の存在が示されました。電弱ホール効果により生成された光は、通常の物質と電磁相互作用でエネルギーをやり取りします。つまり、核反応の大きさのニュートリノのエネルギーが、光を通して周囲の物質の熱エネルギーに転換されます。

さらに、この現象は、太陽のコロナ領域で発現し、太陽内部では起こらないことが分かりました。つまり、太陽コロナ領域だけに存在する新たな熱の生成機構の存在が明らかになりました。

なお、本研究成果は、2023812日(土)公開のPhysics Open誌に掲載されました。

論文名:Topological interaction of neutrino with photon in a magnetic field - Electroweak Hall effect(ニュートリノと光子のトポロジー的な相互作用―電弱ホール効果)
URL:https://doi.org/10.1016/j.physo.2023.100174

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日食により観察できる太陽コロナ