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高品質の多重量子井戸型半導体ナノワイヤの作製に成功~熱安定性に優れたシリコン搭載可能な光通信帯ナノスケール光源を実現~(量子集積エレクトロニクス研究センター 教授 石川史太郎)

2023年9月28日

北海道大学
東京大学
株式会社東レリサーチセンター

ポイント

●シリコン基板上で多重量子井戸型半導体ナノワイヤの作製に成功。
●高品質で熱安定性に優れた発光・受光性能を持つGaAs/GaInNAs材料。
●シリコンテクノロジーに実装可能な高性能光通信、太陽電池などへの展開に期待。

概要

北海道大学大学院情報科学院の博士前期課程学生の中間海音氏、同大学量子集積エレクトロニクス研究センターの石川史太郎教授、同大学大学院情報科学研究院の樋浦諭志准教授、村山明宏教授、東京大学大学院工学系研究科の肥後昭男特任講師、東レリサーチセンターの川崎直彦博士、スウェーデン・リンショピン大学のウェイミンチェン教授、イリーナブヤノバ教授らの研究グループは、発光・受光機能と熱安定性に優れたガリウムヒ素・ガリウムインジウム窒素ヒ素半導体ナノワイヤを、シリコン基板上に多重量子井戸構造を持つナノワイヤとして合成することに成功しました。

ナノワイヤはその一本一本をレーザーやLEDなどとして機能させることができます。本研究では、可変成形ビーム法を用いた大面積電子線描画装置によって、微細な開口を持つマスクパターンを形成の上、ナノワイヤの結晶成長が可能になる温度・圧力領域を拡大し、高品質なナノワイヤ結晶を得ることができました。同材料からは良好な発光特性が光通信帯域の波長1.3μmまで得られており、シリコンテクノロジーへ融合可能な熱安定性に優れた極微細通信光源となることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023822日(火)公開のApplied Physics Letters誌に掲載されました。

論文名:GaAs/GaInNAs core-multishell nanowires with a triple quantum-well structure emitting in the telecommunication range(通信帯域で発光するGaAs/GaInNAs半導体多重量子井戸構造)
URL:https://doi.org/10.1063/5.0160080

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シリコンウエハ上に形成された微細パターンを反映したナノワイヤ配列と、ワイヤ単体の断面構造。整った形状の約10ナノメートルの幅を持つ3重のGaInNAs量子井戸が積層されている。窒素濃度を増やすことで近赤外の光通信帯域波長1.3μmまで発光を長波長化できた。