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タンパク質ドメインの見過ごされてきた機能的役割を解明~イオンチャネルの新しいイオン選択の仕組みの解明に向けて~(先端生命科学研究院 助教 塚本 卓)

2023年10月10日

ポイント

●従来切除されてきた細胞内ドメインを含む、全長型アニオンチャネルロドプシンの発現に成功。
●硝酸イオンを優先的に輸送する仕組みと、その生理的役割を示唆。
●イオン選択フィルターとは違うイオンチャネルの新しいイオン選択の仕組みの解明に期待。

概要

北海道大学大学院生命科学院ソフトマター専攻修士課程2年の大木優也氏、同大学大学院先端生命科学研究院の塚本 卓助教らの研究グループは、全長型アニオンチャネルロドプシンが硝酸イオンを優先的に輸送すること、及びその仕組みの一端を明らかにしました。また、硝酸イオンを優先的に輸送する機能は、宿主生物(海洋藻類)が窒素源を獲得するために役立っている可能性を示唆しました。

タンパク質の基礎研究では、特定の構造を持たない末端部分を切除することが、試料安定化や遺伝子組換えによる発現量増加のための手段の一つになっています。しかし、これではタンパク質の本来の機能だけでなく、切除された部分の機能的役割を見逃すおそれがあります。本研究の対象であるアニオンチャネルロドプシン(由来生物の名前を含めて以下、GtACR1と表記)もまた、末端にある細胞内ドメインがその役割を検証されないまま切除された状態で、研究が行われてきました。

そこで本研究では、こうした現状を打破し、GtACR1の本来の機能と、細胞内ドメインの機能的役割を明らかにすることを目的に、全長型アニオンチャネルロドプシン(以下、GtACR1_fullと表記)の機能解析を行い、これまで研究されてきた細胞内ドメインが切除されたGtACR1との比較を行いました。その結果、GtACR1_fullは、宿主生物の窒素源になり得る硝酸イオンを優先的に輸送すること、細胞内ドメインはその選択性を担っていることを明らかにしました。

なお、本研究成果は、2023929日(金)公開のJournal of Biological Chemistry誌に掲載されました。

論文名:The preferential transport of NO3- by full-length Guillardia theta anion channelrhodopsin 1 is enhanced by its extended cytoplasmic domain(全長型アニオンチャネルロドプシンのNO3-優先的な輸送機能は細胞内ドメインによって促進される)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jbc.2023.105305

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pH電極法により、GtACR1_fullの陰イオン輸送活性を測定している様子