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「草」と「木」の境目はどこ?~力学のレンズを通して、植物の新しい分類方法を発見~(工学研究院 教授 佐藤太裕)

2023年10月10日

ポイント

●草と木の体を支える仕組みの違いに基づく、植物の明快で新しい分類方法を開発。
●内部水分による圧力を考慮した計算モデルを導入し、到達可能な最大高さを初めて定式化。
●「材質や形状による固有の硬さ」と「水分による疑似的な硬さ」の力学的な分離に成功。

概要

北海道大学大学院工学院博士後期課程の金浜瞳也氏と同大学院工学研究院の佐藤太裕教授の研究グループは、草と木の体を支える仕組みの違いに基づく、明快で新しい植物の分類則を発見しました。

研究グループは、細く柔らかい体を有する草をはじめとする「草本植物」が、光合成に必要な高さまで自立した状態を保ちつつ成長できることに着目しました。そして、この仕組みを力学的に明らかにすることは、細く柔らかい体で重力にうまく抵抗する仕組みの解明に繋がると考えました。乾燥や伐採に伴う水分の流出によって体が大きくたわむことから、草本植物の体を支える仕組みには内部水分が大きく関わっていると予想されます。植物に見られる円筒形の構造では、十分な水分が供給されることで生じる圧力が、植物を上部に引き上げる張力に還元されます。研究グループは、この張力が植物の力学的な安定性に及ぼす影響について、力学理論に基づく定式化を行いました。

その結果、一般的に「草」と呼ばれる植物たちが、張力を活かした構造と軽く細い形状を巧みに組み合わせることで、自重により体が倒伏する現象を巧みに回避し、自身の重さで最大高さが支配されないようにしていることが理論的に明らかになりました。これを踏まえ、「張力の影響と自重の影響のどちらが大きいか」という観点から、その植物が「自身の材料的な性質や形状が織りなす固有の硬さ」と「水分によって生じる疑似的な硬さ」のどちらを駆使して体を支えているタイプなのかを判別し、力学的観点から草と木を明快かつ簡単に分類できる、植物の新たな分類則の開発に成功しました。

なお、本研究成果は、2023106日(金)公開のProceedings of the National Academy of Sciences(PNAS、米国科学アカデミー紀要誌に掲載されました。

論文名:Mechanics-Based Classification Rule for Plants(力学に基づく植物の分類ルール)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2308319120

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本研究の概念図