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200年来の地質学の謎、ドロマイトの生成機構を解明~結晶材料のより迅速かつ効率的な製造にもつながると期待~(低温科学研究所 教授 木村勇気)

2023年11月24日

ポイント

●成長と溶解を周期的に繰り返すことでドロマイトの成長速度を数桁上げることに成功。
●成長の難しいドロマイトが自然環境に豊富に存在している理由を解明。
●他の鉱物の形成メカニズムの議論と効率的な結晶材料の合成手法に新たな指針を与える成果。

概要

北海道大学低温科学研究所の木村勇気教授、山﨑智也特任助教は、ミシガン大学のWenhao Sun助教らの研究グループと共に、成長が難しいドロマイト(CaMg(CO3)2)という鉱物が堆積岩として天然に豊富に存在している理由を解明しました。

ドロマイトは天然には多量に存在しているにもかかわらず、常温付近では成長しないことが長年の謎でした。従来の鉱物の形成は一定の成長条件下で得られた成長速度を元に議論されます。これに対しミシガン大学の研究グループは、成長条件が周期的に変化することでドロマイトの溶解と結晶成長が繰り返される結果、成長速度が7桁大きくなることをシミュレーションで示し、北海道大学の研究グループは、液中透過型電子顕微鏡を用いた新しい手法でドロマイトを実際に成長させることに成功しました。この成長条件の周期的な変動は、降雨と晴天や昼夜の温度差などで自然界では普遍的に起きていることから、他の鉱物の形成メカニズムの議論にも新たな指針を与える成果です。また、結晶材料の合成においても、成長条件の周期的な変化による成長の迅速化や高効率化に繋がると期待されます。

なお、本研究成果は、20231124日(金)公開のScience誌に掲載されました。

論文名:Dissolution enables dolomite crystal growth near ambient conditions(溶解によるドロマイト結晶の常温常圧付近での成長)
URL:https://doi.org/10.1126/science.adi3690

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ドロマイトの形成を加速する成長条件の変化例:(A)浸水と蒸発、(B)降雨と晴天