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AIとGISによる骨粗鬆症治療薬の新規薬理効果解析法を確立~より客観的な、薬理効果解析法・形態計測法として今後の活用に期待~(歯学研究院 教授 飯村忠浩)

2023年11月14日

ポイント

●骨粗鬆症治療薬―PTH製剤:テリパラチドによる皮質骨微細構造への薬理効果の詳細を解明。
●AI(人工知能)とGIS(地図情報システム)を融合した新規骨組織の形態解析法を確立。
●観察者バイアスを極力排除した客観的な形態計測法や、薬理学的効果評価法への応用に期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の飯村忠浩教授と、同大学院歯学院博士課程4年の星(沼端)麻里絵氏らの研究グループは、AI(人工知能)による形態認識及び解析システムと、GIS(地理情報システム)を利用した解析対象物のマッピング法を確立し、骨粗鬆症治療薬PTH(副甲状腺ホルモン)製剤による、皮質骨への薬理学的作用を解明しました。

骨粗鬆症は、進行すると腰椎や大腿骨頚部などの体を支える重要な部位にも骨折を引き起こすため、要介護人口増加の主要な要因です。したがって、骨粗鬆症治療薬の効果を詳細に解明する研究は非常に重要な課題です。これまで骨粗鬆症治療薬の効果は主に骨の内部の海綿骨の評価を中心に行われていました。しかし、骨折の多くは、骨の外壁である皮質骨が薄く弱くなった部位で起こるとされており、海綿骨だけではなく皮質骨の微細構造の評価方法が必要とされていました。

今回、研究グループは、骨粗鬆症治療薬が皮質骨の微細構造に与える影響を解明するため、骨粗鬆症治療薬であるPTH製剤:テリパラチドを投与したイヌの肋骨を解析しました。皮質骨内の神経血管束の通り道である"ハバース管"の組織学的特徴をAIディープラーニングで機械学習させた後、半自動的に認識させ、形態計測を行いました。またAIで認識させたハバース管に、地理情報システム(Geographic Information SystemGIS)を適用することで、皮質骨内における、その密度・面積についてのマッピング表示を行いました。その結果、テリパラチドの高頻度・高用量投与では、吸収期の拡大したハバース管が多数癒合して吸収孔を形成し、皮質骨の多孔化を生じることが明らかになりました。本研究及び解析手法のさらなる発展により、観察者バイアスを極力排除した客観的な形態計測法や、薬理学的効果評価法の進化が期待されます。

なお本研究成果は、20231012日(木)公開のBone Reports誌にオンライン掲載されました。

論文名:Evaluation of cortical bone remodeling in canines treated with daily and weekly administrations of teriparatide by establishing AI-driven morphometric analyses and GIS-based spatial mapping.(AI駆動型形態計測法とGISに基づいた空間マッピング法の確立による、テリパラチドを連日または週1回投与したイヌ皮質骨リモデリングの評価)
URL:https://doi.org/10.1016/j.bonr.2023.101720

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AIによる半自動認識の手順。STEP1の前に複数枚の教師データを作成し、AIディープラーニングさせて得られたAIトレーニングデータを元画像に適応した後、二値化(定量化)する。