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深海に及ぶ動物プランクトンの現存量と特徴が明らかに~群集構造とサイズ組成の、海域と水深による差も評価~(水産科学研究院 准教授 山口 篤)

2023年11月17日

ポイント

●日本周辺の三つの縁辺海を含む7定点にて水深3,000 mまでの動物プランクトンを調査。
●動物プランクトンの出現個体数に比べて生体体積には海域による差が大きいことが判明。
●動物プランクトン群集は八つに区分され、そのサイズ組成は水深により異なることが示唆。

概要

北海道大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授、松野孝平助教、島根大学の仲村康秀助教らの研究グループは、日本周辺の西部北太平洋と三つの縁辺海:オホーツク海、日本海及び東シナ海に設けた7定点にて、海表面から水深3,000 mに及ぶ動物プランクトンの出現個体数、生体体積、群集構造及びサイズ組成を明らかにしました。

動物プランクトンの出現個体数と生体体積は、いずれも水深が増すにつれて減少しており、両者と水深の関係は両対数式で表現することができました。出現個体数に比べて生体体積には海域や定点による差が大きく、表層における海域間の大小関係は深海まで保存されていることが明らかになりました。動物プランクトン群集は八つに区分され、特に日本海の深海には他海域に見られない、低水温な日本海固有水に特有の群集が見られることが明らかになりました。動物プランクトンのサイズ組成はNormalized Biomass Size SpectraNBSS)により評価し、深海では量は少ないものの、大型個体が多く、サイズ多様性が高いことが明らかになりました。

本研究の成果は、表層から深海への物質輸送の役割を担う動物プランクトンの、全水柱を通しての現存量、群集構造とサイズ組成について、日本周辺海域の海域毎の特徴を明らかにしたもので、表層から深海への物質輸送量を正確に推定する上で欠かせない、重要な知見となります。

なお本研究成果は、2023116日(月)公開のProgress in Oceanography誌にオンライン掲載されました。

論文名:Vertical changes in zooplankton abundance, biomass, and community structure at seven stations down to 3000 m in neighboring waters of Japan during the summer: Insights from ZooScan imaging analysis(夏季の日本周辺海域の7定点における表層から水深3000 mに及ぶネット動物プランクトンの出現個体数、バイオマスと群集構造に関する研究:ZooScanによる解析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.pocean.2023.103155

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日本周辺海域の7定点における動物プランクトンの1立方メートルあたりの出現個体数(左)と生体体積(右)の深度変化。シンボルの違いは定点の違いを示す。いずれも深度が増すにつれて減少していたが、生体体積の方が定点(海域)による差が大きく、生体体積が表層にて高い海域では、深海でも高いことが分かる。