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シスプラチンの低用量維持投与は抗腫瘍効果を増強する~抗がん剤による炎症性変化を抑え、腫瘍血管を正常化する新たな治療法を提案~(歯学研究院 教授 樋田京子)

2023年12月4日

ポイント

●抗がん剤の低用量維持投与法が標準的な投与方法より治療効果が高くなることを証明。
●シスプラチンの新たな投与方法の開発に貢献。
●尿路上皮癌患者の予後改善への寄与に期待。

概要

北海道大学大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教、同大学大学院医学研究院の篠原信雄教授、菊地 央客員研究員、藤田医科大学医学部の樋田泰浩教授(元北海道大学病院准教授)らの研究グループは、抗がん剤であるシスプラチンの低用量維持投与が、標準治療である最大耐用量による投与と比較して腫瘍組織の炎症性変化を抑制し、抗腫瘍効果を増強する可能性を示しました。

転移を伴う進行性尿路上皮癌は最も予後不良な癌の一つです。治療には抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤などが使われますが、長期の奏効が得られるケースは稀で、治療効果は不十分です。

研究グループは、これまで抗がん剤による炎症性変化が腫瘍血管の異常性をもたらし、治療抵抗性のメカニズムとなっていることを報告しています。そこで、抗がん剤による腫瘍組織内の炎症性変化を抑制することが、予後改善に繋がるのではないかと考えました。休薬期間を設けずに、低用量の抗がん剤を長期間に持続的投与する低用量維持投与は、血管新生を抑制することがこれまで報告されています。今回、マウス膀胱癌モデルを用いて各種抗がん剤を低用量維持投与したところ、シスプラチンの低用量維持投与により腫瘍組織の炎症性変化が抑制され、腫瘍血管の正常化とともに抗腫瘍効果が増強することが分かりました。本研究により、様々ながん治療に用いられている抗がん剤シスプラチンの低用量維持投与法が効果的であることが示唆されました。

なお、本研究結果は2023121日(金)、British Journal of Cancer誌にオンライン公開されました。

論文名:Low-dose metronomic cisplatin as an antiangiogenic and anti-inflammatory strategy for cancer(血管新生阻害と抗炎症作用をもたらすシスプラチン低用量維持投与法)
URL:https://doi.org/10.1038/s41416-023-02498-2

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本研究の成果の概要図