2024年2月8日
ポイント
●最新のAI技術を用いて、氷河湖の形成と消滅を高い精度で解析。
●氷河湖の変動が、氷河の流動や起伏、夏の気候にコントロールされることが判明。
●地球温暖化によって氷河湖の形成が氷床内陸まで広がる見込み。
概要
北海道大学低温科学研究所の王 鄴凡博士研究員と杉山 慎教授らの研究グループは、AI技術の一つである機械学習法によって大量の衛星画像を解析し、グリーンランドの氷河上で季節的に形成される氷河湖の位置や大きさを8年間にわたって測定しました。氷河氷床融解への影響が危惧される湖の変動を、最新の解析技術によって明らかにする取り組みです。
研究の結果、湖が生まれる頻度は氷河上の起伏や流動速度に影響を受けることが分かりました。流れが穏やかで表面が平坦な氷河では、より多くの湖が作られる傾向があります。また6月初旬から中旬にかけて雪や氷の融け水によって氷河湖が生まれ、その後8月下旬に消失する季節変化が明らかになりました。湖の拡大規模は気候に影響を受けており、夏の気温が高くて融解が促進される年には総面積が拡大することが分かりました。
この研究成果は、グリーンランド北西部における氷河湖変動を世界に先駆けて明らかにするものです。温暖化が進むグリーンランドでは、今後湖が拡大して氷河の融解を促進する可能性があり、融解水による海水準上昇を予測する上でも重要な成果です。また、最新の機械学習法を氷河と湖の測定に適用した点でも注目されます。グリーンランド北西部では日本の研究グループによる集中的な研究が行われており、今後は他分野との連携による研究の発展が期待されます。
本研究成果は、2024年1月26日(金)公開のRemote Sensing of Environment誌にオンライン掲載されました。
論文名:Supraglacial lake evolution on Tracy and Heilprin Glaciers in northwestern Greenland from 2014 to 2021(グリーンランド北西部トレイシー氷河及びヘイルプリン氷河における2014~2021年の氷河湖変動)
URL:https://doi.org/10.1016/j.rse.2024.114006
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