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バイオマスから分解・回収可能な非天然型多糖材料へ~持続可能な機能性高分子材料の創出に期待~(工学研究院 教授 佐藤敏文、助教 李 灃)

2024年2月27日

ポイント

●多様に修飾された非天然型多糖材料の簡便合成法の確立に成功。
●本手法により合成した高分子材料はバイオマス由来かつ化学的に何度もリサイクル可能。
●次世代の持続可能な機能性高分子材料開発の加速に期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の佐藤敏文教授、磯野拓也准教授及び李 灃助教らの研究グループは、セルロースの熱分解物を原料として用いることで、化学的に何度もリサイクル可能な非天然型多糖類の簡便合成法の確立に成功しました。

セルロースに代表される多糖は地球上で最も豊富に存在するバイオマス資源であり、それらから高分子材料を作り出すことは化石資源に依存しない持続可能な社会の構築につながります。また、多糖は化学的に修飾できる箇所が多く存在するため、その修飾の仕方により多様な性質の材料をつくることができます。しかし、多糖を自在に修飾するには多くの手順が必要であるため、構造と物性の関係性についての探求が不十分であり、より簡便な合成法の開発が求められています。

研究グループは、セルロースの熱分解物(LGOCyrene)から簡便な合成法により様々な修飾を施した分子(アセタールモノマー)を調製し、その重合によって多様な非天然型多糖類を化学合成できることを見出しました。アセタールモノマーの修飾の仕方により、得られる多糖の性質を調節することができ、天然に存在しない多糖を作り出すことも可能です。実際に合成できた非天然型多糖から、有機ガラスと同等レベルの高い透明性を有するフィルムに加工できることも見出しました。今後、本合成手法を利用することで、様々な多糖類高分子材料の開発が期待できます。

また、本合成法によって得られた多糖材料は普段の使用条件下で安定である一方、特定の条件で分解し、アセタールモノマーとして回収できるため、何度もリサイクルできる持続可能な高分子材料と言えます。以上のように、本研究の発見は持続可能な高分子材料の開発に大きく貢献するものと期待されます。

なお、本研究成果は、202429日(金)公開のACS Macro Letters誌に掲載されました。

論文名:Chemically Recyclable Unnatural (1→6)-Polysaccharides from Cellulose-Derived Levoglucosenone and Dihydrolevoglucosenone(セルロース由来であるレボグルコセノンやジヒドロレボグルコセノンを用いたケミカルリサイクル可能な非天然型(1→6)多糖の合成)
URL:https://doi.org/10.1021/acsmacrolett.3c00720

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非天然型多糖類合成の概要図