2024年2月29日
ポイント
●環状アルコールは医薬品に重要な骨格で、還元的環化反応による効率的な合成が可能。
●光触媒とコバルト触媒による新手法の開発に成功。
●還元的環化反応の実用的利用に期待。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の佐藤美洋教授、中村顕斗助教らの研究グループは、光触媒とコバルト触媒を組み合わせ、アルキンとアルデヒドをもつ原料を還元的環化させることに成功しました。この反応で得られる多様な環状アルコールは、医薬品骨格に含まれる普遍的な構造であるため、創薬研究での利用が期待されます。
これまで報告されている手法では、このタイプの反応には、一般に空気に不安定な遷移金属触媒が利用されており、また反応を触媒的に進行させるためには、過剰量の還元剤などの添加も必要でした。これらの触媒や添加剤は、酸素や湿気を除去した特殊な環境下での取り扱いが必要で、また添加剤から廃棄物が生じることもあり、このタイプの反応の実用的な利用を阻んでいました。
この問題に対し、本研究では空気下で取り扱い容易な試薬のみを用い、コバルト触媒活性種の再生段階に水を利用するクリーンな光触媒系を確立しました。本反応では、アミンが持つ電子を光触媒・コバルト触媒へと効率よく伝達させるため、過剰量の添加剤を必要としません。本研究では光源としてLEDを用いていますが、遷移金属触媒によって進行する化学反応への光エネルギーの活用に関する技術の開発が世界中で現在注目されていることから、本研究のさらなる発展が期待されます。
なお本研究成果は、アメリカ化学会誌ACS Catalysisのオンライン版に2024年2月16日(金)に公開されました。
論文名:Dual Photoredox/Cobalt-Catalyzed Reductive Cyclization of Alkynals(光酸化還元/コバルト協働触媒によるアルキナールの還元的環化反応)
URL:https://doi.org/10.1021/acscatal.3c06206
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