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深夜の時間帯にフィーバーする北極域の海鳥繁殖地~録音データが明かす、白夜における海鳥の生活リズム~(北極域研究センター 准教授 ポドリスキ・エヴゲニ)

2024年3月18日

ポイント

●ヒメウミスズメの繁殖地にマイクを設置し、録音データを解析。
●録音された鳴き声や羽ばたき音が、海鳥の日周行動パターンを反映していることが判明。
●遠隔地やアクセス困難な地域での野生動物の行動観察において音響モニタリングが有用。

概要

北海道大学北極域研究センターのポドリスキ・エヴゲニ准教授、オーフス大学(デンマーク)のモスベック博士、ヨハンセン博士らの研究グループは、北極域に生息する海鳥、ヒメウミスズメ(Alle alle)の生活リズムを調査することを目的に、彼らの繁殖地に長期間マイクを設置し、録音された鳴き声や羽ばたき音を解析しました。本研究の舞台は、世界最北の先住民集落、グリーンランド・シオラパルクです。シオラパルクはヒメウミスズメの最大の繁殖地として知られており、毎年夏になると約6,000万羽のヒメウミスズメがこの地域にやってきます。これまで、一日中太陽が沈まない白夜の環境において、彼らがどのような生活リズムを持っているのか、その生態はあまり分かっていませんでした。

本研究の結果、繁殖地内で録音された鳴き声や羽ばたき音など、ヒメウミスズメが発する全ての音が、日中、特に1400から1600に最も弱くなり、深夜230から330の時間帯に最大になるというサイクルが確認されました。この音の周期は、彼らの1日の行動パターンをよく反映しており、ヒメウミスズメは白夜であっても概日リズムに基づく生活パターンを持っていることが録音データから示されました。この結果は、鳥類たちの一般的な生活リズムとして認識されている「明け方に活発に鳴く」という傾向とは異なる点でも、非常に興味深い発見です。

本研究は、日照時間に変化がない環境下での鳥類の行動を理解する上で重要な知見を提供したと同時に、遠隔地やアクセス困難な地域での野生動物の行動観察において音響モニタリングが有用であることを示しました。

なお、本研究成果は2024315日(金)公開のCommunication Biology誌に掲載されました。

論文名:Acoustic monitoring reveals a diel rhythm of an arctic seabird colony (little auk, Alle alle)(音響モニタリングで解明する海鳥の日周行動:北極域に生息する海鳥、ヒメウミスズメ(Alle alle))
URL:https://doi.org/10.1038/s42003-024-05954-8

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本研究の対象地、北極域のヒメウミスズメ繁殖地の様子。毎年夏になるとヒメウミスズメの大群が訪れる。